私の心は、彷徨うように昨夜のことを思い出していた。なんと様々な出来事が起きたショッピング体験だったのだろう。ビクトリアがジェニーと行為をしたとき、私が嫉妬を感じなかったことに、我がことながら驚いた。嫉妬を感じなかったのは、多分、私自身があの行為で欠かせぬ役割を担っていたという理由もあったし、私自身、2人と同じくらい興奮していたからという理由もあったのだろう。もう一つ驚いたことは、私にとって初めての、実際の女性との経験であり、その経験の間に、甘んじて行った数々の行為だった。正直に言って、私はこれまで、他の女性のお尻にキスをしたいと思ったことは、まったくなかった。ほんの少しも、そう思ったことはない。だが、ジェニーが主導権を握り、私に命令したとき、それを行うのが正しいと感じられたのだった。セックスの点で様々なプレーをしようと決め、その成り行きを受け入れた場合、人は、どのような展開に連れて行かれるか分からないものだ。思うに、ビックに着飾らせ、気持ちの上で彼を女性とみなして、愛し合ったとき、私にとって、実際の女性との性体験に通じるドアを開いたことになったのだろう。私は、ビクトリアの肩越しにジェニーとキスをしたときのことを思い出し、次第に興奮し始めていた。
自分で自分を触り始めたとき、遅れそうになっていることに気が付いた。ゲイルとお昼にランチを一緒にする約束があったのだ。ふと気がつくとゲイルの顔がジェニーの顔に置き換わっている。・・・ここで、やめなきゃ。じゃないと、私、自制できなくなってしまう・・・と、そう思った。素早く、心の中、いろいろ想像することを禁止し、シャワーを浴びて、素早く着替えを済ました。多分、無意識的にだったと思うが、いつもよりセクシーな下着を身に付け、薄地のピンクと黒のブラウス、そして、身体をぴったりと包む生地のスラックスを履いた。昨夜、履いたピンクのハイヒールを眼にしたとき、「これもいいんじゃない?」と思った。スラックスの裾を捲り上げ、ハイヒールに足を入れ、素早くふくらはぎにレースを巻きつけ、結んだ。今日は、あの小さな南京錠はつける必要はないだろう。履いた後、スラックスの裾を元に戻し、立ち上がった。鏡に顔を向けると、そこには普段よりセクシーな私がいた。だが、私の脳のなかで燃え続けている想いがあったせいか、普段よりセクシーな格好であっても、何の問題もないだろうと判断した。
ビックの職場の前に車を寄せた後、ミラーで化粧をチェックした。正面玄関からオフィスに入っていくと、ゲイルが顔を上げた。ドアを閉めるために、一回転して見せる格好になったが、ゲイルがびっくりして私の姿を見直していたのに気がついた。そのとき気づいたのだが、明るい日光の中に立つと、側面から見た場合、薄地のブラウスを通して、胸とブラジャーのラインがはっきりと見えていたのであった。私はドアを閉め、彼女のデスクの前に行き、デスクにもたれかかって彼女の両手を握った。挨拶のつもりで、彼女の手を揉む。
「ゲイル、あなたお腹がすいていると嬉しいんだけど。私、ペコペコなの」
彼女も私の手を揉み返し、微かに笑みを浮かべながら私の目をまっすぐに見た。
「私もペコペコ。すぐに出られるわ」