スティーブは疲れきっていたが、それでもなかなか眠れなかった。
「過剰反応」
この言葉は、最近、山ほど使われるようになっている。30分ほどベッドの中、絶え間なく寝返りを繰り返した後、スティーブは起き上がり、廊下を進み、書斎に入った。パソコンのスイッチを入れ、Eメールのソフトを立ち上げた。
過剰反応? 彼はすでに眼にしていたのである。これに対して過剰反応などありえない・・・ほとんど、ありえない。
バーバラは、依然としてポーター氏と連絡を取り合っているのだった。それがスティーブには我慢できないのである。土曜日、あの場に彼女はいたのに、あれを変えることは何も起きていなかったのだ。スティーブは分かっていた・・・証拠はないということを・・・・だが、依然としてバーバラがポーターと話しをしており、情報を伝えるために、おそらくどこかで会っていることは分かっていた。これをやめさせる、良い方法をスティーブは知っていた。この1週間ほど、彼は、その方法のことを考えては、内心喜んでいたところがある。
私立探偵事務所から渡された3穴リングのバインダーを取り出し、求めているページを開いた。手元にある情報をすべて打ち込むのは大変で、2時間ほど掛かった。だが、ようやくその作業を終えたときは、達成感で気分が良かった。明日は睡眠不足の影響が出てしまうだろうなとは感じていた・・・だが、今夜は、価値のあることを行ったという達成感で満足していた。
「過剰反応だと?」 スティーブは、クククと笑い声を出した。「みんな、これにも反応しろよ」
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昨日の午後、彼女は有給で仕事を休んだ。そして再び、彼女は重圧に押しつぶされそうになる。白と黒の文字を眺める・・・スティーブとの離婚に関して裁判所に申請する法的書類を読むことは、彼女にとって、まったく準備をしていなかったことだった。
今朝、バーバラは心重く、集中できず、すっかり困惑していた。昨夜はずっと、自分がどうしてこのようになってしまったのかを考えようとしていた。だが無駄だった。心に濃く曇りが掛かっており、ほとんど何も考えられなかったのである。2時間ほどしか眠っていない。
仕事に行く途中、車のガソリンがほぼ空になっており、ガソリン・スタンドに立ち寄らなければならないことに気づいた。操作パネルで赤いライトを点滅させながら、職場まで何とかたどり着こうとするなど、恐くてできなかった。こういうことはすべてスティーブがしてくれていた。自分でガソリンを入れたのはずいぶん前だった。バーバラは、案内の指示を読まなければ、クレジットカードをスロットに正しく入れることすらできなかった。
混乱しつつも、何度試しても、カードがすぐに弾き出されてしまい、手順の最初の2操作ほどをやり直さなければならない。その後、ようやく、最初に、汚れから保護されたボックスのボタンを押し、燃料のドアのロックを外さなければならず、それをし忘れていたことに気づく。バーバラは、こういう経験はあまり繰り返さずにすめばいいのにと思った。