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心が望むものをすべて 6 (6) 

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初めて騒ぎについて耳にしたのは、地元のテレビ局での早朝ニュース・トークの番組でだった。出勤準備をしながら見ていたのだが、新刊のノンフィクションが書店に並ぶらしく、誰もが「必読の本」と褒めちぎっていたのである。皆、その本を『私のように黒い夜』(参考)の再来と呼んでいた。このアメリカという国で、差別、迫害、憎悪を加えても良いと世間一般に認められている最後の対象。その対象に対する法的、社会的な不寛容を、仮借なく暴露した、その生活を自ら行っている人物自らが語った本という。タイトルは『据え置かれた欲望:トランスジェンダーとしてアメリカで生きる』。著者はダニエル・ドゥボロー。

偶然などではありえない・・・

発売された朝、書店の前の行列の先頭に私はいた。裏表紙にあったダニーの写真に手を当て、かつて、彼女を抱いた時に感じた温かみを再び感じようとした。たとえ、本の裏表紙であっても、彼女の顔を再び見ることができてとても嬉しかった。たとえ数分でも、暇ができるとすぐに本を読んだ。その本は一人称で語られていたが、ダニーがこの物語のリサーチをしている時に出会った他のTガールたちの体験から収集された、引用や3人称の語りも含まれていた。

私はむさぼるように、一字一句読み進めた。第1章「初めて夢を抱いた時」から。ダニーは、たった2歳の時から自分の性同一性について何か変だと知っていたTガールたちや、成人してから初めて自分の別の存在に気づいた、「遅れてやってきた」Tガールたちについて語っていた。さらに、一生のすべてをクローゼットの中に隠れて暮らした女の子や、それとは逆に、胸を張って堂々と「カムアウト」した人たちのことも記している。ダニーは、年代を追って、自分の特別なアイデンティティを大切なパートナーと分かち合えた人々、同じTガール同士でしか分かち合えなかった人々、そして、誰もおらず孤独に隠し通した人々のことを記録していた。カムアウトし、少なくともある程度幸せを見出した人々のことも書いていたし、夢を追求した挙句、すべてを失ってしまった人々のことも書いていた。

[2007/02/22] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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