2ntブログ



報復 第3章 (4) 

スティーブが理性的になってくれさえすれば、すべてが元通り普通に戻れるのに。何と言っても、バーバラは、事実、レイフとセックスはしていなかったのだ。それに、レイフの馬鹿な一物を口に許したこともないし・・・その下の所にも。レイフは、人の良い男で、バーバラが望まないことを強要することなどなかったし、ゆっくりと関係を進めようと言っていた。プレッシャーは絶対かけないと、彼はよく言っていた。ではあるが、バーバラは、あの、スティーブがレイフの車を川へ落とした午後に、あれをしたかもしれないとも思っていた。

レイフは、あの事件について、いまだに激怒している。スティーブには、あんなことをする必要などなかったはずだ、と言っていた。完全に限度を超えた行為だと。野蛮な行為だと。ではあるが、レイフは警察を呼び出したりはしなかった。あの日、あの公園でレイフがしたことは、沈みかかった車のダッシュボードに手を伸ばし、携帯電話を取り、レッカー車を呼び出したことだけ。スティーブを訴えることを考えているとは言っていたが、バーバラの知る限り、レイフはまだそれをしていない。

バーバラは、最近、自分に起きたすべてのことについて、頭の中が混乱していたし、自分の人生がどこに向かっているかうろたえていたし、普通だったら自分が行うことがなかったこまごましたことに囲まれ悩まされていた。心が、あれやこれやのことに勝手に飛び移ろい、1つのことに十分に時間を掛けて落ち着いて考えることができなくなっていた。

ようやく職場に復帰する頃には、すでに彼女の神経はかなりぼろぼろになっていた。復帰の初日からバーバラは遅刻し、そのことを彼女は嫌悪した。遅刻により一日のスタートが最悪になってしまうし、いつも、その日、一日中の調子を決めてしまうように思われた。最近、何も良いことがない。

バーバラは、ビルの6階に着いた時、職場のすべての人が自分を見ているような気がした。バーバラは、いずれにせよ、普段から人の目を少し気にする性格ではあるのだが、この日は、いつもに増して人の目が気になった。先週、スティーブがあれほど詮索に夢中になっていたことを知った後は、バーバラは終日監視されているような気持ちだった。とても居心地が悪い。今はみんなが自分のことを見ている。探るような眼で。まだ私立探偵がいて、自分の行動をくまなく追跡しているのだろうか?

「やあ、バーブ」

トムが声を掛けた。彼は首をひねって、間仕切り小部屋のキュービクルの間の通路を歩くバーバラの後姿を見ていた。

「今日は、誰も一緒じゃないの?」

トムの表情は柔和だったが、バーバラは彼の眼に何か別のものを見たように感じた。

「あ、・・・いえ・・・誰も」 困惑しながら答えた。

バーバラは、後ろを振り返って、通路に何人か他の従業員がいて自分と同僚のトムを見ているのを見た。バーバラは、トムの質問の意図をはっきりとは理解していなかったが、その変な質問に驚いたばかりでなく、他の人たちが廊下に立って自分を見ていたことを知り、二重の意味で驚いていた。その中にあの2人がいた。バーバラが嫌っている女性2人だ・・・彼女たちも、バーバラのことを大好きだとは思っていない・・・その2人がいやらしそうな笑みを浮かべていた。バーバラは、不安になりながらトムを一瞥し、さっと振り戻って、通路を進んだ。

[2007/03/06] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する