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心が望むものをすべて 6 (8) 

私たちの話は第6章でも続けられていた。第6章「現実が夢になったとき」。

「・・・彼女は限りなく私を愛してくれました・・・ともかく、その時には、そう思えました。彼女は、その頃の素晴らしい始まりの時期を『夢の国』と呼んでいましたが、まさにその通りでした。そしてその後は、毎日毎日、次々に新しい夢が実現されていく日々が続いたのです。私が、『人まえ』に姿を現すことができたのは、彼女が私の世界を広げてくれたから。私が『いけないエッチな娘』になれたのは、彼女が私がそういう風になるのを求めてくれたから。私は彼女の言うことに従いました。でも、そのように従順に従ったことは、手段であって目的ではありませんでした。愛する者に従うこと・・・それは乗り物であって、目的地ではないのです。言うなれば、レンタカーのようなもの。私と彼女は、何度も愛し合いました。それも、たっぷりと。そして、それまでは秘密でなかったことを、それまでは知らなかった人々や、それまでも友達であった人々と分かち合ったのです。その気になれば、『彼女と別れてしまったのはどうして? 私は、どんな間違いをしてしまったの?』と自問することができるとは思います。でも、むしろ、『私は彼女の相手としてふさわしい人間? そのような人間になるために、私はちゃんとしていたかしら?』と自問しているのです・・・」

第8章を読んだ時、涙が溢れ始めた。第8章「夢が終わりを迎えた時」

「・・・始まりがあるものすべてには、終わりがあります。過剰に燃え上がりすぎて、とうとう、それに追いつけなくなってしまったという場合があるでしょう。飽きが来てしまったという場合もあります。現実の自分たちの姿が、求めていた自分たちの姿を圧倒してしまったという場合もあるでしょう。私たちの場合、単に、愚かな過ちを犯してしまったという理由でした。その過ちとは、そもそも、私たちが愛し合い、信頼し合い、気持ちを寄せ合ったことではありません。私たちが、愛や信頼を見失い、それを取り戻す試みをやめてしまったことが過ちだったのです。多分、あれはただのイリュージョン、ちょっとしたパーラー・マジックのようなものに過ぎなかったのかもしれません。それは彼女がいつも言っていたこと。やがて、2人を覆っていた煙が晴れていき、鏡にひびが入る。パッと部屋の明かりが点けられ、現実の世界と対面させられることになるのです。2人が愛を分かち合ったベッドは過去のものとなり、家も自分が帰るべき場所ではなくなる。その家の持ち主は、すでに先に進んでしまっている。『出口はこちらよ。足元に気をつけてね』 暖かさが消えてしまった後は、外の空気も冷たい。いつか、どこかで、また暖かさを見つけるかもしれない。見つけられなくても、その思い出だけでも暖かくなれる・・・前ほどの暖かさではないにしても・・・」

[2007/06/05] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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