続く2日ほどは、大人たちの振り付け演出に従った行動。あれだよ、近所のお宅を訪問したり、町に車で出かけたりといった類のこと。アネットと一緒になることは、ほとんどなかった。車で出かける時、僕たちがバック・シートに座ったというのはあったけど。確かに、彼女と2人でバックシートに座るってのは、たまに楽しいことがあるのは事実だよ。でもね、前の席に、キビシイ両親が座っていたら、全然だめ。そういう楽しいことなんてありえない。
で、残り3日となったとき、とうとう僕とアネットは、親たちに頼み込んで、親たちと別行動を取ることにしたんだ。アネットは、採石場に僕を連れて行ってくれると約束してた。そこに泳げる場所があるらしい。でも、そのことは、親たちには内緒にするようにと。彼女は、そのことを僕に言った時、ウインクをして見せたが、それ以上は何も説明しなかった。何があるのか、僕には全然、分からなかった。
アネットと2人で、彼女の両親のプリムス(
参考)に乗り込み、スピードを上げて走り出した(彼女は仮免許を取得していたので大丈夫)。僕は水着をタオルに丸めて持ってきていた。それに日焼けクリームに、ジョー・クール・サングラス(
参考)も。20分ほど車を走らせた後、彼女はハイウェーから降り、舗装されていない道に入った。わだちがついた道をさらに5分か6分ほど走ると、急に開けた場所に出た。そこには窒息しそうなほど車がいっぱい停まっていた。いや、窒息しそうなほどと言うのは言いすぎかもしれないが、20から30台はあって、道脇とか、木々の陰とかに乱雑に停まっていて、ともかく、それぞれ都合が良い場所に勝手に乗り捨てられていたというのが一般的な印象だった。
車から降り、ドアをバタンと閉めながら僕はアネットに言った。
「ここで着替えたほうがいいのかな?」
「いや、上に着替えるところがあるから」
そう言って、小道を指差した。その小道はこんもり茂った木々の先に通じている。
「こんな採石場の廃墟にロッカー完備の更衣室とかあるの?」 馬鹿な質問とは分かっていたけど、僕はニュー・ジャージー育ちなわけで、田舎の事情は、何にも知らないのは当然なのだよ。
「まあ、厳密に言って、違うけど」
彼女はそれしか言わず、すでに小道を進んでいく。彼女自身の丸めたタオルを手に、僕についてくるよう手で合図していた。僕たちは、砕けた石がゴロゴロ転がっている道を数分ほど歩いた。足首をひねりそうになったことが、一度ならずあった。僕は都会っ子だから、こういう山歩きには慣れてないんだよ。
「もうすぐよ」
かなり巨大な岩の間を通り抜けるようにして角を曲がると、目の前に小さな浜辺が現れた。30人から40人くらいの人が、タオルの上に横になったり、腰掛けたりしていた。瞬間は分からなかったが、よく見ると、その誰もが、何も着ていなかった。
「水着なし! ここではみんなそうするの。さあ、さあ、急いで!」