トレーシーとマークは2人ともベッドの中にいて朝食を待っていたが、私は通常の朝の仕事を行うことができた。全裸のままの2人に朝食を出した後、私はバスルームに行き湯船にお湯を溜め、トレーシーのためのエネマを用意した。お湯が溜まる間、着替え室に散らかっていた衣類を集め、浴室を掃除した。
マークが朝食を済まし、着替え、仕事に出かけ、私も寝室の掃除を済ますと、トレーシーは私を連れて、私の寝室に入った。そこで、私の持ち物をいろいろ見回り、私のために着るものを見つけてくれた。トレーシーの判断では、私が着られるものとしては、膝丈までの長さの黒いスカートと赤いボタンダウンのブラウスだけだった。
そのショッピングの一日は、私が想像したものとは丸で違った一日になった。私は、店をゆっくり歩き回る、のどかな一日になるだろうと思っていた。しかし実際は、一日の間にどれだけの数の店を見て回れるかという、慌ただしい競争のような一日になった。それに数え切れないほど試着をし、着替えを繰り返したので、そもそも、最初にどんな服を着ていたか忘れそうになったほど。
その日、家に戻った時には、何を買ったかすら覚えていなかった。ただ、トレーシーが私の衣類のために数千ドルも使ったことだけははっきり認識していた。もう一つ、はっきり覚えていることは、私がおへそにピアスをしたこと。思ったほど痛みはなかったし、思った以上にセクシーに見えるようになったのは確かだった。
トレーシーは、買ってきたアイテムを私と一緒にすべて片づけた後、そのまま、マークが待つベッドへ行った。私とマリアは、ナイティを身につけ、一緒にベッドに入った。私は、マリアをその気にさせようとしたが、彼女は、今日は疲れているのと呟くだけだった。私も疲れていたが、マリアに借りがあるような気がして、彼女に尽くしてあげたい気持ちだったのだ。ともかく、すぐに私にも眠気が襲ってきた。気がついた時には、翌朝になっていて、目覚ましベルがなっていた。
それから続く2日間は、私は極めてまじめに仕事に専念した。雑事をせっせとこなし、溜まっていた洗濯も済ませ、木曜日の仕事が終わる前に、金曜日にすべき掃除も済ませておいた。私の仕事ぶりに感心していた人がいたかどうかは分からないが、他の人の眼は気にならなかった。ともかく、金曜になる前に仕事を片づけたいと思っていた。
金曜になり、私はマリアと一緒に、病院の予約の時間に充分余裕を持たせて、家を出た。病院につくとすぐに、私は何枚かの書類をすべて記入するよう求められた。記入し尽くすのに、気が遠くなるほど時間がかかった。ようやく、すべてを記入し終えた後、ようやく病院の中を見回す時間ができた。部屋じゅうに、性転換を扱った文献が並べてあった。2、3枚、パンフレットを手にしたが、それを読み始める前に、マリアと共に呼び出された。
私たちは診察室につれて行かれ、そこで、2人とも簡単に性器を検査された。マリアは採血もされていた。その後、看護婦は部屋を出て行ったが、入れ替わりに、医師が部屋に入ってきた。年の頃は40代後半だが、非常に魅力的な女性だった。私より少し背が高く、少し体重もありそうな体格をしていた。
医師はマリアの手を取った。
「こんにちは、マリア。調子はどう?」
「全然問題ありません。むしろ、こんなに調子がいいのは久しぶりです」
「じゃあ、ホルモンの副作用はないわけね?」
「ええ」
「良かったわね。すでに採血は済ませてあるわけだから、後は、注射を1本して、新しいお薬の処方せんを出すことだけですね」
医師は一旦、診察室を出て、1分後に注射器を持って戻ってきた。マリアは診察台に覆い被さり、医師の方へお尻を突き出した。マリアはソング・パンティとガーター・ベルトとストッキングのセットを身につけていた。注射の時、服を脱ぐ必要がないよう、この格好で来ていたのである。
注射を終え、医師は言った。
「さて、マリア? 良かったら、あなたのお友達と二人っきりでお話させてもらえるかしら?」
マリアは、もちろんよろしいですわと言い、私を置いて診察室から出て行った。どういう理由か分からないけれど、私は急に不安な気持ちになった。