「バースデイ・プレゼント」 第6章
ゲイルは、微笑みながらオフィスに戻ってきた。僕は、外で買ってきたサンドイッチを食べ終わったばかりで、口を拭っていたところだった。サンドイッチの包装紙をごみ箱に捨てた時、ゲイルが僕のところに来た。
「ボス? リップ・グロスをつけ直さないといけませんよ。ナプキンで全部拭ってしまったと思うから・・・ドナとお話をしたんです。お2人のちょっとした遊び、楽しそうですね。もっと言うと、ボスが、そのスラックスの下に、パンティやストッキングを履いてるのを想像しただけで、私、興奮してしまいます。ドナは、私に、どんな点でもいいから、自由に手伝いをするように言ってくれました。というわけで、私の助言を聞いて、グロスをつけ直してください。ご自分が美しく見えていると分かると、一日の仕事にも、もっと精がだせる気分になりますよ」
ゲイルの言葉に顔を赤らめたが、実際、今の格好をしている以上、そのことで彼女にあまり文句を言えた身分ではない。仕方なく、話を合わせることにした。この遊びはもうしばらく続くだろうが、後になって、みんなで笑える時が来るだろう。ポケットにグロスの小瓶を入れ、それをつけにトイレに行こうとした。するとゲイルは手を伸ばして、僕の前に立ちはだかった。
「ボスは、これについては、初心者なんですよ。だから、私にさせてください」
と、そう言って、僕の手から小瓶を取り上げた。
ゲイルが僕に近寄る、衣服を通してであるが、彼女の肉感的な体から発せられる温かみを感じた。ゲイルは小瓶から刷毛を出し、グロスを僕の唇に塗り始めた。
さらに小瓶を机に置き、開いた手で僕のあごを押さえ、顔が揺れないようにさせた。
「お口を開けて、ビクトリア。ちゃんと塗ってあげるから」
口を開くと、彼女は注意深く唇全体にグロスを塗り広げた。その時になってようやく、ゲイルが僕のことをビクトリアと呼んだことに気がついた。この2日ほど、ドナが僕に対してその名前を使い続けていたため、あやうく、気づかぬままになりそうだった。驚いた僕は、ゲイルから離れようとした。だが、彼女は僕のあごをしっかりと押さえたまま、にっこり微笑んでいる。
「ごめんなさい。ボスの新しい名前を使って楽しもうとしたわけじゃないの。ただ、私たち女の子の間には何も秘密がないことを言いたかっただけ。それに、ビックよりずっと可愛らしい名前ですもの」
そう言って、僕の目をまっすぐに見つめ微笑んでいる。
「リップ・グロスのつるつるした感じ、セクシーで良いでしょう? それにピンク色も、本当に、女の子っぽくて、素敵。私もこのグロスつけてもいいかしら?」
ゲイルに密着され、このように焦らされていた僕は、勃起し始めていた。自分の本性に再び目覚め、僕は返答した。
「いいよ。女の子同士で口紅とかを使いまわすのは、よくある、自然なことだと思うから」
我ながら、よい返答だと思った。