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報復(6) 


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2人が家にたどり着くまで、沈黙が続いた。玄関ドアが閉じると同時に、バーバラのイライラが沸騰点に達した。彼女は毒づいた。

「あなた、私の友達の前で私に恥ずかしい思いをさせたかっただけでしょ? 違う?・・・」

「それだけなのよ。あなたは私の友達が好きじゃないのよ。だから、ことあるごとに、私の友達を貶める。それなのよね・・・ジミーに対してあなたが取った勇ましい態度・・・あなたって、どうして、いつもあういうことをするわけ? ジミーは良い人よ。あんな目に会わされる筋合いじゃないわ」

スティーブは驚いた顔で彼女を見ていた。2、3秒その驚きの表情が続いたが、やがて彼の顔から、怒りの表情が驚きの表情を追い出していく。

「ちょっといいかな? あそこで君が恥ずかしい思いをしたとして、そういう風にしてしまった張本人は君なんだよ。君が自分で自分を目立つ存在にしていた。僕がしたことは、そんな君を見ているだけだった。他のことは何もしていない。あのバカにずっとくっついて、あいつが低脳なジョークを言うたび、女子高生のようにけらけら笑って。いったい、自分が何をしていたか分かっているのか? まったく・・・君は、まるであいつが映画スターか何かのように、あいつのところに引っ付いていたんだぜ?」

バーバラは唖然とした。口喧嘩になったとしても、スティーブが、こんなに強く反撃に出ることはめったにないことだった。まれに、そうなった場合、そのときは、彼が話し合いの話題となっていることを非常に深刻にとらえている場合であった。彼が議論において頑として譲らなくなった場合、バーバラが上手に出ることができたことはめったになかった。

バーバラは弁解がましい口調になった。「私・・・彼はただ会話をしようとしてただけなのよ。あなたがどうして私にそんなにひどいことを言うのか分からないわ。ジミーは本当に人の良い人なの。時々、わざわざ私のところに来て、話しかけてくれるのよ。それのどこがいけないの? 私が友達を作ることのどこが悪いの?」

「全然、悪いところなんかないさ・・・そいつの言う言葉の一つ一つにいちいち感心したり笑ったりするようなところまで行かなければね・・・君が、パーティの間に少しでも自分の夫に話しかける労を厭わなければね・・・君が誰かさんとあからさまに仲良くなりすぎて、周りの誰もが無視できなくなるようなことにならなければね」 

スティーブは意図的に長時間バーバラを睨みつけた。

「あの後、いったい、何をするつもりだったんだい?・・・あいつの膝の上に腰掛けて、人まえだというのに、いちゃいちゃキスしあうつもりだったのか? 実際、いつそうなってもおかしくないような状態だったみたいだけどね。まさか、テーブルの下は見えなかったが、君たち、足を触れ合わせたりもしてたかも。僕には否定できないな」

バーバラの顔が蒼白になり、その後、二拍もするうちに見るみる赤くなった。

「ええ、ええ、してたかもしれないわ」 皮肉交じりに言う。そして次に、けんか腰になって言った。「多分、この次は、彼の膝の上にお尻を乗せることにするわ! ジミーは、女に優しくする方法を知っているもの・・・彼は、工事現場を巡回する建築労働者の誰かさんとは違うから!」

スティーブは口元を固く引き締めた。妻の顔をじっと見つめた。彼には、この女性のことが突然分からなくなってしまった。

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