ボブは、クリスティンにリビング・ルームへと案内されながら、彼女の後ろについて歩いた。クリスティンの魅惑的な腰に目を惹きつけられる。こいつは、うまく行きそうだな、と思った。実は、ボブは、クリスティンに言っていないことがあったのである。それは、ジョンという客は、ボブに、案内人にはセクシー系の女を頼むと言っていたことである。ボブは、クリスティンが引っ込み思案で控えめな性格であるのを知っていた。だから、このことをかのじょに伝えて、怖気づかせてしまい、仕事を断られるのを望まなかったのである。
2人はソファに座り、家の間取りのことや、契約の内容について話し合った。ボブは、話しながら、どうしてもクリスティンの素晴らしい肉体に眼が行ってしまった。ジムは、まったく、運が良いヤツだぜ、と思う。
15分ほど話し合いをした。ボブは別件の契約の予定があって、行かなくてはならない。クリスティンの様子を見たところ、この仕事にやる気を持っているようだ。ボブは満足した。不機嫌だったら、どんなに美人でも、何も売れない。
「じゃ、僕は9:30頃に仕事が終わるから、その時、チェックをしに戻ることにするよ」
「ありがとう、ボブ。こんなチャンスをくれて、本当に感謝しているわ!」 クリスティンは嬉しそうに答えた。
それじゃあ、と手を振って家を出ながら、ボブは思った。
「・・・感謝しなければならないのは、俺の方だよ・・・」
ボブには、ジョン・オーエンスは、クリスティンの助けがなければ、買い手になってくれないと分かっていた。ふと、ジョンは、セクシー系の女の子を頼むと言った時、何か別のことを念頭に置いていたのかもしれないと思った。だが、ボブは、そのことは忘れることにし、契約の仕事へ向かった。
クリスティンがジョン・オーエンスの泊まっているホテルのロビーに立っているとき、彼女の後ろから、男性が2人、近づいてきた。クリスティンは、ロビーから電話で、赤い服を着て待っていると伝えておいた。そんなことは伝える必要がなかっただろう。というのも、ロビーにいる女性は彼女一人だったからである。
「やあ、クリスティン」 ジョンが声をかけた。
クリスティンは振り向き、自分に手を差し出している男性を見て、ちょっと驚き、たじろいだ。間を置いて、手を差し出し握手をする。
「あっ、こんばんは、オーエンスさんですね?」
クリスティンは、このような非常にハンサムな男性が来るとは予想していなかった。カッと体の血液が熱くなるのを感じる。オーエンス氏は30代前半のように見えた。砂色の髪と透明感がある青い瞳。背が高く、引き締まった体をしている。短パンとゴルフウェアというカジュアルな服装をしていた。
ジョンは笑った。
「オーエンスさん、なんて呼ばれると僕の父のことみたいだな。ジョンと呼んでくれ」
彼は連れの方を指差した。
「こちらは僕のビジネス・パートナーのトム・アンダーソン。僕のお目付け役でここにいるんだ」
クリスティンは、その男に目を向け、彼も同じくらい魅力的だと感じた。少し、恥ずかしそうに微笑んだ。
「どうも、初めまして」
「トムです」
トムもジョンと同じようなカジュアルな服装をしていた。クリスティンは、少しドレスアップしすぎたかもしれないと思った。それに、2人とも、他の男性がいつもするように、自分の体つきを見ていることにも気がついた。
「こんばんは、トム」 少し不自然な笑い声を出しつつ、クリスティンはトムと握手をした。