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報復 第4章 (2) 

カウンセラーの名前は、ヴァーン・ヒューストンと言う。彼は神経科医でもなければ、心理学者でもない。オースティンにある正規のカウンセリング専門学校を出て、26年間、家族の問題を専門としたカウンセリングを行ってきた。しかし、彼は、この分野についての最新情報のすべてを追いかけ、それに通じている。実際、今日、彼が時間に遅れたのも、そのためだった。この都市の郊外にある生涯教育の施設で講義を受けてきたところだったのである。

「やあやあ、お2人にお目にかかれて嬉しいです。それに、今日は遅れてしまって、申し訳ない」

前置きの情報はすべて、駆け足で確認された。ヒューストン氏は、前置きは素早く片付け、客がここに来た理由に関する案件に一刻も早く着手したがっているようだった。ヒューストン氏は、伝えたいことをすべて伝え終えると、急に落ち着き、静かに自分のクライアントの様子を観察した。

「それで・・・お2人は、このカウンセリングから、どのような結果を得たいとお思いですか?・・・カーティス夫人?」

急に名指しで質問され、バーバラは不意をつかれた。

「どうして・・・えーっと・・・そうですね・・・私は、夫と和解したいと思ってるんです。・・・今後も、2人で人生を続けていけるように」

「なるほど・・・人生を続ける? お2人で人生を続けていくことに、どうして問題があるのですか?」

ヒューストン氏は思慮深く尋ねた。バーバラの顔がピンク色に染まった。目が泳ぎ、カウンセラーの後ろ、窓のカーテン・レールに視線が向いた。少し沈黙が続く。

「・・・スティーブが、シティ・ビュー公園で、私の知り合いの男性と私が一緒にいるのを見たのです・・・そして、夫は、私がその男性と・・・その・・・セックスをしてきていると思っているんです」

「どうして、ご主人はそう思ったのですか?」

バーバラはヒューストン氏から視線を避けた。オフィスの中のすべてに視線を向けても、彼には視線を向けなかった・・・それに彼女の夫にも。

「私たちが、彼の・・・つまり私の知り合いの人の・・・車に一緒に座っていたから・・・そして、その・・・よく知りません」

バーバラは言葉尻を濁した。両手が上がり、奇妙な、何か拒否するような仕草をしたが、その後、膝の上に戻った。

スティーブはヒューストン氏を静かに観察していた。視界の横、バーバラの手が上がって、何か動いた後、降りるのが見えた。その突然の動きに対して、ヒューストン氏の目がさっと動き、すぐに元に戻るのを見た。一瞬、彼が難しい顔をし、眉間に小さなしわが浮かぶのが見えた。即座に行った判断だが、このヒューストン氏という人物は、なかなか観察の鋭い人物だとスティーブは思った。おそらくこの人は、たいていの人がマンガ本を読むときと同じく容易に、人のボディー・ランゲージを読み解くことができるのだろう。

「君は、その知り合いのために、ブラを外して、パンティも脱いでいたと言うのを忘れちゃいけないよ、いいね?」

スティーブが横から口を出した。この会話に自分も何か付け加えようと思ってだった。バーバラは毒のある視線を彼に向けた。

「ご主人には、後でお話を聞きますから」 

ヒューストン氏は素早く言葉を挟んだ。声の調子は平坦だった。

「どうぞ、お続けください、奥さん」


[2007/09/10] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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