「あら、ちょっとやり方のポイントを教えてあげてもいいわよ」
「でも、私たちのハネムーンには間に合わないわ」
彼女は少し考えている様子だった。「じゃあ、今夜はどう?」
「でも、今夜はパーティがあるんでしょう?」
「パーティの後よ。10時ごろ。私、あまり遅くまでいないの。遅くなると、いろいろ乱れてくるから」
多分、私は、この話に乗ることに決めた顔つきをしていたに違いない。私を見ながら、タマラは続けた。
「あなたの家の住所を教えて。帰る途中で、あなたのところに立ち寄るから」
結局、彼女に住所を教えた。タマラが出て行った後、私は、この出来事についてじっくり考えた。ジェフがこんなお楽しみを許すことで、自分が、寛大で現代的な女性になったような気がした。それに、彼との関係のことを考え、ちょっとワイルドなことをしようとしている。私は、自分の家に戻り、タマラが来るのを待った。結婚式を控えているのに、他のことが何も考えられなくなっていた。
ちょうど10時になる頃、タマラがやってきた。同じ服装で、同じ、手提げバッグを持っていた。ちょっとおしゃべりをしたが、タマラは、私に、ダンスをして見せてと言った。
「あなたがしたようなこと、全然できないわ」
「うーん、少し、肩をほぐさなくちゃダメよ。何か、アルコール類はない?」
冷蔵庫に、栓を開けたワインが残っていた。
2人でキッチンに行き、ワインを出した。タマラは、グラスを断り、ボトルごと私に渡した。ラッパ飲みするように言う。お酒をラッパ飲みすること自体、私にはまったく馴染みのないこと。でも、何か得るためには、気持ちをリラックスさせなければいけないように思い、やってみた。タマラもラッパ飲みして、また私にボトルを渡し、もう一口、飲むように言った。2回目のときは、少ししか躊躇しなかった。
リビングに戻るとタマラが訊いた。
「何か、特に覚えたい動きとかある?」
「どんな動きがあったか忘れちゃったわ」
「じゃあ、もう一度、踊るから、よく見て、考えてね」
タマラはラジカセを出し、カセットを入れ、再びダンスを始めた。2度目なのに、このときも私は、彼女のダンスの上手さ、セクシーさ、動きの的確さに圧倒された。こんな風にジェフにも踊ってあげたんだと思ったら、急に不安になった。でも、私は何を不安に感じてたのだろう?
「また、手錠を嵌めてくれる?」
心の中の何かが私に、そう言わせた・・・それが何かは今も分からない。
タマラの目が光ったような気がした。軽く微笑むのが見えた。彼女は音楽を止め、バッグのところに行き、手錠を取り出した。そして私のところに来て、椅子に手錠で拘束した。それから、またバッグのところに行き、別のカセットテープを出した。私の家にあるステレオを見つけ、それにテープを入れた。