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報復 第4章 (4) 

気持ちを落ち着けてスティーブは話を続けた。

「・・・そして、彼女がその男と会ったのは、その時が最初ではなかったのです。彼女が言う事実関係が、彼女にとって都合が良い場合、この女性は嘘をついていると考えなければいけません。僕が彼女を家から追い出した理由について、彼女は両親にいくつも嘘を並べ立てました。僕が、彼女の両親に、バーバラがその『知り合いの男性』とやらに尻を揉ませている写真を見せ、公園で一緒にいるビデオを見せた後で、ようやく、真実の一部が出てきたのですよ」

「奥さん? いまご主人がおっしゃったことは、あなたとその男性の接触や、あなたとご両親の関係について、正確な説明だとお思いですか?」

「彼女の祖母もいました」 スティーブが口を挟んだ。

「・・・あなたのおばあさんとの関係も含めて。どうですか?」

バーバラは落ち着かない様子で椅子に座ったままだった。長時間、沈黙が続いた。彼女はカウンセラーと目を会わそうとしなかった。

「・・・ええ・・・かなり正しいとは思います」 呟くような声でバーバラは答えた。

「なるほど・・・」

ヒューストン氏は、平坦な声の調子で答え、視線をスティーブとバーバラの両方に均等に分けて、両者を交互に見つめた。

突然、彼は体を起こし、デスクの上に両肘をついた。

「ご主人・・・そして奥さん・・・。私は、つねづね、意見の食い違いを見せているお2人を仲介する上での、私の役割は何かと言うと、お2人が、それぞれ、心の中にあることを自由に話せる中立的な場所を提供することだと思っているのです。一方的に片方の人の側に立つ人がいないような中立的な場所です。私はと言うと、お二人のことを知らない。あなた方の家に食事に招かれることもないでしょう・・・日曜日の午後に電話をかけて、おしゃべりをする、なんてこともありません。お2人が私の前で何を話しても、その内容があなたのご家族、友人、仕事の仲間に伝わることなどありません。・・・それに、まあ、あなた方が犯罪とかそういうことを示唆する話しをする場合は除きますが、警察に伝わるなどもありえません」

ヒューストン氏は、そこまで話した後、しばらく2人を見つめ続けた。

「・・・お2人には、毎週1回、個別に私と面会し、各週の終わりにご夫婦揃ってもう一度、私と面会してくださるよう、お勧めします。いかがでしょうか? これはお認めいただけませんか?」

スティーブは、「ご夫婦」という言葉に抗議しようと口を開きかけた。だが、その瞬間、文句を言うのはやめようと思い直した。結局、ただの言葉に過ぎないのだから、何の意味もない。スティーブは、何も言わずに、ただ頷いて承諾した。バーバラも、そのすぐ後に承諾した。

「良かった、良かった・・・それでは、来週、最初の面会に来ていただく訳ですが、その前にお2人には、この質問用紙に記入してきて欲しいのです。そうしてくださると、私も助かる」

ヒューストン氏は、デスクの下の引き出しから茶封筒を取り出し、2人に渡した。


[2007/09/21] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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