クリスティンは、自分を抑え、鎮めるのに苦労していた。彼女は、引っ込み思案の性格なのではあるが、非常に情熱的な女性でもある。今夜までは、その情熱は、もっぱら夫のジムに向けられていた。
・・・私、この人たちと一緒にいて、どうしてこんなにワクワクしているの?
でも、何とか気持ちを立て直す。
・・・ダメダメ、しっかり仕事のことを考えていなきゃ。
アルコールがもたらす良い効果の一つは、自信が高まることである。クリスティンは、この契約を取るためなら、どんなことでもしようと心に決めた。
・・・どんなことでもするって、私ったら!
それを考え、またも脚の間が疼きだすのを感じるクリスティンだった。
クリスティンは、一呼吸置き、ジョンに率直に訊いた。
「それで、ジョンさん? この二つ目の物件について、契約のサインをいただけませんか?」
ジョンは、クリスティンが可愛い顔をして直接的に質問したことに、苦笑いした。
「クリスティン? 僕は、この家を大変気に入ってるんだが、契約について詳細のすべてに同意できるか、まだ分からないんだよ」
クリスティンはジョンの瞳を見つめて言った。
「分かりますわ・・・」
そして、少し間を置いて、付け加えた。
「お望みのこと、どんなことでもおっしゃってください」
そう言いながらクリスティンは思った。「・・・どうしたら彼は満足してくれるかしら?・・・」 そして突然、変な考えが心をよぎった。「こんなことを想像しちゃって・・・女性ホルモンが元気になりすぎてる。なんとか抑えこまなくちゃ・・・」
ジョンはクリスティンが少し瞳を輝かせたのに気づいた。いぶかしげに顔を歪め、クリスティンから目をそらして言った。
「そうだなあ、できれば、ボブと話し合いたと思うんだが・・・」
クリスティンは時計に目をやり、答えた。
「ボブは、もう少しすると私の家に来ることになっています。私の家に来て、ボブと話し合っていただけると嬉しいですわ。もし、本当に、私には、これ以上、ジョンさんを満足させるために、お役に立てることはないとお思いなら、ですが」
クリスティンは、少しほのめかす言葉を言ったことで、我が事ながら驚いていた。この男性が自分に与えている影響の大きさが信じられなかった。
ジョンは、この美しい人妻に、再び関心を寄せた。彼は、クリスティンが最後に言った言葉を聞いたとき、彼女が意味ありげな笑みを浮かべたような気がした。彼女が言っている「お役に立てる」というのは、本当に自分が望んでいるタイプのことを言ってるのだろうか? ジョンは確信が持てなかった。これまでは、クリスティンは非常にビジネスライクであったし、ついさっきまで、彼女の態度も、引っ込み思案とまでは行かなくとも、多少、控えめだったのは事実だ。本当に、彼女は自分自身の体を使って契約をまとめるつもりだなどと、本当に可能性があることなのだろうか? ジョンは、この可能性を引き出すことに決めた。