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報復 第4章 (9) 

スティーブは話しを続けた。

「・・・君が、口を開くたびに嘘をついてるのは分かっているんだ。これからの人生を一緒に進んでいきたいだって? そんなことは言わないで欲しいものだ。君が望んでいることは、すべてを包み隠して、何事もなかったようなフリをしたいということだろう。だが、今回は、そうは行かないよ」

スティーブは感情的になっていた。

「・・・君は何て言ったっけ? えぇ? 何て言ったんだ? ああ、そうだ、僕が、この件を大ごとに捕らえてるとか・・・そんなことを言ったね? え? 君も、君の父親も、母親も・・・おばあさんもだったか・・・忘れてしまった・・・ともかく、みんなで、僕が過剰反応していると言っていた。その言葉に、僕は吐き気を感じている。僕は、君の嘘、君の不倫、君の裏切り、君のごまかし、そして僕に対する敬意の欠如について反応しているだけだよ。そういうのは、過剰反応とは言わない・・・君という人間がどういう人間か、それに関して反応しているだけだ」

そこまで言って、スティーブは大きく息を吸い、そして吐いた。そして椅子に深々と座った。奇妙なことに、この時ほど気分が晴れ晴れしたのは、この数週間、なかったことだった。多分、このように、公平な第三者の前で個人的な問題を述べつくすことには、何か特別な効果があるのだろう。ここには、バーバラの家族はおらず、彼女の一方的な味方をされたり、しょっちゅう彼女の弁護に回られたりすることはない。

「・・・以上です」

スティーブは穏やかな声で言い、カウンセラーを見た。長い沈黙が続いた。

ようやくヒューストン氏が口を開いた。

「オーケー。私たちが今、どのあたりにいるか分かりあえたようですね。今夜はここでやめるのが良さそうに思います。来週、お2人それぞれに、個別に会う時間がありますし、木曜日にはご一緒に会う時間があるわけですから・・・お2人には、ぜひ、相手が提起した問題点について、1週間かけて、よく考えていただき、相手が困っている問題点を、どのように解決できるか、それを考えてきていただけると幸いです」

「ちょっと待ってください」

バーバラが口を挟んだ。

「私には? 私には、言う機会が与えられないのですか?」

ヒューストン氏は静かな口調で言った。

「奥さん? 奥さんにはすでに話していただきましたよ。お2人の関係において、最も大きいとお思いの問題について、奥さんに意見を頂きました。同じように、ご主人にも語っていただきました。今、私たちにできる、最も良いこととは、お2人双方に、相手が抱えている問題を解決する方法を見つけ出そうとしてもらうことなんです。相手の身になって。どちらも、ご自分の見解を弁護する必要はないんですよ。それぞれ双方の心の中に、それぞれが重要な問題と思っていることが存在している。それを双方が知るだけで充分なんです。まずは、最大と考えられている問題。それを取り除かなくてはいけません。それをして、ようやく、お2人、それぞれが抱いている他の問題の解決に向けて進むことができるんですよ」

「正直にね」 スティーブが口を挟んだ。「こんな言葉を言う必要などないんだが」

バーバラはカッと気色ばんだ。心の中の火が燃え上がり、目の表情に表れていた。

「もちろんです、ご主人」 ヒューストン氏は穏やかに言った。「それは了解していただいてますよね。お二人を悩ませていることに答えを見つけるのに、それ以外の方法はありません。よろしいですね?」

スティーブは、しっかり頷いた。

バーバラは、ヒューストン氏が夫の味方のように振舞うのが気に食わなかったが、何か反論すると、自分を愚かに見せてしまうことになるのに気付いていた。彼女も、億劫そうに、頷いた。

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[2007/10/15] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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