2ntブログ



報復 第5章 (6) 

月曜日:個別カウンセリング

「100%、完全に正直になること・・・それが鍵ですぞ!」 ヒューストン氏は強く念を押した。「その点は強調しすぎることはないと思っているのです、奥さん。仮にスティーブと和解するチャンスがあるとすれば、奥さんが正直に話していると分かってもらうことなのですよ。言い逃れやごまかしは一切なしで。恥ずかしいからとか、・・・悔やんでいることだからとか、そういう理由で包み隠すこともなしで。・・・よろしいですね!」

ヒューストン氏は、このクライアントに少々腹を立てていた。すでに9月も第3週になっている。この夫婦のカウンセリングに入ってから2ヶ月になっているのに、このカーティス夫人が、他の男性と性行為をしたのを認めたのは、ようやく先週になってからだった。カーティス夫人と個別カウンセリングをしたのは何回目になるだろう? このような告白は、2回目か3回目のカウンセリングで出てきて欲しいものだと彼は思っていた。

「正直に言って、奥さんは、この席でまともな話し合いができる状態になるのに、非常に時間が掛かりすぎているのですよ。ご主人は、多分、もう我慢の限界に来ているとお伝えしなければなりません。現状ですと、奥さんが、たとえ、昼は明るく夜は暗いと言っても、ご主人は奥さんのことを信じないと思いますよ」

「分かっています、ヒューストンさん・・・」 バーバラは静かな口調で始めた。「私は愚かでした。それは分かっています。どんな種類であれ、レイフと性行為をしたことを否定し続ければ、この問題は消えてなくなるだろうと期待していたんです。自分が行ったことをずっと恥じていて、それを隠そうとしたんです。でも祖母と話しをし、私もようやく分かったんです・・・私は、愚かで、自己中心的に振舞っていたと。あえて、そうしていたと。ヒューストンさんには、これまでのこと、お詫びいたします。それにスティーブにも、会った時に、謝ろうと思ってるんです」

ヒューストン氏は深々と椅子に座り、長時間じっとクライアントのことを見つめた。長い沈黙の後、彼は溜息をついた。今、このカーチス婦人が言ったことは正直な気持ちであるのは間違いなさそうだ。今日の彼女は、落ち着いているし、しっかりしている。眼に浮かぶ表情も冷静だし、人の顔をまっすぐに見て話している。これまでは、自分の行動に対する言い訳をさがしたり、質問をはぐらかそうとしてる時、両手をいじったり、曲げたりしていたが、今日は静かに膝の上に乗せたままにしている。ヒューストン氏は、ここからどんなことが引き出せるか試してみることにした。

「よろしい、奥さん。まずは警告しておくことにします。つまり、スティーブは、私に、あなたと話すときには、あなたをみっちり叩きのめすよう求めているということです。これから先、長期にわたって、奥さんは、スティーブがそう要求していることを考えることになるでしょう。奥さんは私を軽蔑するかもしれない。私が口を開くたびに、嫌な思いをすることになるでしょう。これまでは、ゆっくり優しく話しを進めるという方法を試してきました。しかし、それもおしまいということです・・・」

「・・・これからは、奥さんが問題や質問を脇にそらそうとしても、私は決してそれを許さないでしょう。これから、パンチを手加減することもしません。分かりましたか? 聞こえが良い言葉もなければ、デリケートな事情を美しい言葉で包み隠すこともありません。そのようなことをするには、もう、時期が遅すぎる」

バーバラは頷き、小さな声で答えた。「遅いのは分かります。でも、まだ遅すぎて手遅れにはなっていないよう願っています」

「それは、結果を見てみないと分かりませんね・・・」 ヒューストン氏は中立的な口調で答えた。


[2008/02/29] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する