2ntブログ



バースデイ・プレゼント 第8章 (3) 

ベッドに向き直り、そこに置いてあった黒サテンのシャツを取り上げ、腕を通した。素晴らしい肌触りだった。ボタンを留めながら、うまくボタンが留められないのに気づいた。よく見ると、普段の男物シャツとは反対のボタン付けになっていたのだった。ブラウスだったのである。僕はボタンを留め、鏡の中を見てみた。素敵なブラウスだった。光沢があってキラキラ輝き、体にぴったりフィットしている。胸のところも、見栄え良くつきでている。

次にストーン・ウォッシュのジーンズと取り、脚を通した。これもまた、ジッパーのところが普通とは反対になっていた。腰を揺すりながらジーンズを引き上げ、軽くジャンプして、お尻のところをフィットさせた。ジッパーを上げる時、息を吸って腹をへこませなければならなかった。チャックをあげ、ボタンを留めたあと、振り向いて、もう一度、自分の姿を見た。ジーンズが腰から脚にかけてぴちぴちに密着している。これも素晴らしく似合ってるとは思ったが、非常に動きづらかった。ガーターの止め具のところが浮き出て、見えている。

床には黒いストラップつきのハイヒールが置いてあった。ベッドの端に座り、ヒールにストッキングを履いた足を入れようとした。ズボンがきついので、非常に苦労した。何とか履いた後、安堵の溜息をつきながら立ち上がった。黒いストッキングを通して、かすかに足の爪に塗ったピンク色が見える。ヒールのおかげで、お尻が突き上がる感じになり、ふくらはぎの線が強調されて見えた。鏡の中の自分が凄いと感じた。セクシーだ。ドナの助けを借りずに、自分だけで、この姿に変身できたことが信じられなかった。

ヒールで床をコツコツ鳴らしながら、小部屋に入った。ドナはソファに座ってテレビを見ていた。彼女はまだガウンを羽織ったままだった。

「まあ、素敵じゃない!」 ドナはにっこり笑いながら僕を見た。

「ありがとう」 そう答えて、くるりと一回転してみせた。僕は、この女装ごっこはもう止めようと決心したことをすっかり忘れていた。

「ねえ、あなた? テーブルの上に黒いバッグにお金と車のキーが入ってるの。お願いだから、ちょっとコーヒーとドーナッツを買ってきてくれない?」

僕は、テーブルに行きかけて、立ち止まった。唖然としていた。

「こんな格好じゃ、行けないよ」

「こんな格好って?」

「女物の服だよ!」

ドナはソファから立ち上がり、僕を寝室の鏡の前に連れて行った。

「あなたの姿を見てみて? 何が見える?」

「美しいブロンドの女性。でも、この衣装の下に何が隠れているか、僕は知ってるんだよ」

「それはそれでいいの。他の人は誰も知らないんだから。ジェニーが教えてくれた歩き方を忘れないこと。それに明るい裏声で話すことも忘れないでね。唯一の問題は、あなたに誰か男性が近寄ってきた時どうするかだけ。さあ、お願いよ、ドーナッツを買ってきて。私、ちょっとゆっくりしていたいの」


[2008/03/10] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する