ドナは、そう言って僕のお尻を軽く叩き、玄関から送り出した。僕はバッグを手に車に向かった。車に乗り込み、ハイヒールを履いた足で何とかペダルを踏むので、ぎこちなかったが、何とか道路に車を出す。車を出すとき、隣人の一人が僕の方をじっと見ていた。彼の顔には不思議そうな表情が浮かんでいた。
ドーナッツ屋の前に車を寄せ、エンジンを切り、車のドアを開けた。両脚をそろえて外に出してから、体を持ち上げるようにして降りる。注意深く横に体をよけてから車のドアを閉め、歩き方に注意しつつ店の前へ歩いた。
店の中に入った途端、数人の男性客の視線を感じた。コーヒーを飲みながらテーブルに座っていた男性たちで、瞬時に私の体に視線を走らせている。ああ、こういうことが、女の人たちが毎日経験していることなのか、と思った。
少し体を揺すりながら、カウンターへ歩いた。彼等に目の保養をさせてあげる。カウンターで注文をしたとき、レジにいた10代の若者が、鼻を膨らませるのに気づいた。僕の女物のボディー・スプレーの香りを嗅いだのだろう。彼はお釣りを出そうとして、コインを全部床にばら撒いてしまった。
「まあ。でもそのままでいいわ」 できるだけ可愛らしい裏声を使った。「後であなたが拾ったら、それを自分のものにしていいわよ」
ドーナッツが入った箱とコーヒーを受け取り、セクシーに歩いて店を出た。食べ物を持ちながら車のキーを出すので苦労していると、車から降りたばかりの男性が、駆け寄ってきた。
「おや、手伝いましょう」 そう言って、ドーナッツの箱とコーヒーを持ってくれた。
「ありがとう」 と答え、車のドアを開け、乗り込んだ。彼からドーナッツとコーヒーを受け取る。
「いいえ、どういたしまして」 彼はにっこり微笑んで、ドアを閉めてくれた。
僕は、女性が僕たち男性に対して持っているパワーのことを分かり始めていた。車の中、ミラーに映る自分の顔を見ながら、そのことについて、しばし、考えた。なるほど、男に対してパワーがあるんだなあ、と改めて感じた。
家に戻り、食べ物やキーやバッグを抱えながら、玄関に向かった。玄関ドアの突起部にヒールが引っかかり、ちょっとよろけてしまった。家に入り、小部屋のドアのところに行く。中では、ドナが、昨夜、撮ったビデオを見ながら、自慰をしていた。僕が帰ってきたのを見て、ドナは照れ笑いをした。
「ビッキー? 手伝って。私をいかせてくれない? もうちょっとでいくところなの」
僕は食べ物を置いて、ドナの足の間にひざまずいた。
「喜んでいたしますわ。ドナ様」
できる限りの愛らしい裏声を使って、そう答え、今、やり方を調教されている作業を始めた。実際、非常に上手にできたと思っている。