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報復 第5章 (11) 

バーバラは、どうしてポーターと付き合うようになったか、その理由についてはよく分からないと言った。流産の後、気が落ち込み、孤独感を感じていたと言う。秘密を打ち明けることができる人がそばにいなかったので、孤独で傷心していたと。・・・だが、どうして、そんなに孤独感に悩まされたのかは、よく分からないと言った。

「・・・その答えを見つけようと、セラピーのカウンセリングを受けたこともあったの。カウンセリングで分かったことがあったら、あなたに打ち明けようと・・・」

「・・・どうして、他の男性が近づくのを許したのか・・・どうして、彼との交際が。ますます不適切になっていくのを許したのか、それを自分の中で正当化したのか・・・なぜ、自分の価値観を曲げて、自分に対する言い訳を取り繕うようになってしまったのか・・・そういう問題については、まだ答えがわかっていないわ。でも、真正面から取り組めるようになったら、そういう問題もあなたに打ち明けようと思っていた・・・」

「今、確かに分かっていることがあって、それは、流産した後、自分の女らしさが大きく減ってしまったように感じたこと。体重も減って、女っぽい魅力が欠け、男性から求められない存在になったように感じていたの。そんな時、レイフは何度もお世辞を言ってくれた。私の話しをいつでもよく聞いてくれたし。そして、数ヶ月の期間のうちに、いろいろなことが連鎖していったの・・・」

「僕が話しを聞こうとしなかったって?」 スティーブが口を挟んだ。「僕が君のことを美しいと言わなかった? 愛していると言わなかった?」

バーバラは大きく深呼吸した。

「スティーブ、そんな風に感じるなんて、私はとても狭量なのよ。分かっている。実際は、そうではないのに。でも、そう感じたのは事実だったの・・・ちゃんと考えていなかったけど・・・しっかり理由を挙げて考えていなかったのは、ほとんど確かだわ・・・でも、私は、あなたは私の夫なのだから、私のそういう気持ちを分かってくれるべきだと感じていたの」

「ふーん? 理屈が通らないよ」 スティーブは、言い返した。

「理屈が通らない話しだと言ったはずよ」 バーバラは冷静に答えた。「それは分かっているの。・・・でも、あの時、あの場所では、私はちゃんと考えなかった。そのまま、レイフが言い寄るのを受け入れてしまったの」

「自分にお世辞を言ってくれる男がいたから、その男が優しくおしゃべりをしてくれたから、だから不倫を犯したと、そう言ってるのかい? そんなバカな」

「いや、ご主人。不倫をする女性の30パーセントから40パーセントは、自分の心の理由から、そうするのです」 ヒューストン氏が素早く口を挟んだ。彼は、場が険悪になるのを鎮めたかった。

スティーブは、ムッとした顔でヒューストン氏を見た。確かに、専門家が言うのだから、受け入れてやろうとは思うが、女性が浮気をする言い訳として、こんな話は馬鹿げてるとしか思えない。

「ご主人? 男性と女性は、異なった理由で、行動をするものなんです。男性としてのあなたや私にとって『理屈が通る』と思えることが、女性にとって、いつも同じことを意味するとは限らないものです・・・」

ヒューストン氏は優しい口調で続けた。「・・・ご主人が、例えば、身体的に具合が悪いなどといった問題を抱えて、落ち込んでいるとします。そういうときに、ご主人が、浮気をするため他の女性を求めることは多分ないでしょう・・・でも女性の場合、そういうことをする可能性がかなり高いのです」

スティーブは、不満感から、唇をキッと結んだ。彼は理由が欲しかった。自分の妻が浮気をした理由として、突っ込みを入れ、しっかり検討できるような何かが欲しかった。それがはっきりすれば、修復できるかもしれない。だが、これでは、あまりにも実体がなさ過ぎる。

バーバラが、困ったような声で話し始めた。「スティーブ? 私がどれだけ申し訳なく思っているか、それを伝える言葉が、私には見つからないの。あなたを酷く傷つけたのは分かっているわ。間違ったことをしてしまった。自分のしたことがあまりにも恥ずかしく、自分でも耐え切れないほど。あなたの気持ちも分かるつもり。あなたに何とかして償いをしたくて・・・それで・・・」

「嘘だ!」 スティーブが言葉をさえぎった。「僕がどう感じているか、何も分かっていない。分かるはずがない!」 

スティーブは椅子の背もたれに背中を預けた。頭を後ろに傾け、じっと天井を見つめた。


[2008/03/13] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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