仕事の後、僕は家に立ち寄り、シャワーを浴び、着替えをした。その後、ディアドラが泊まっているホテルに向かう。途中、携帯で電話をしておいたので、僕がホテルに着いたときには、彼女はロビーで僕を待っていてくれた。ディアドラは、いつも素敵だと思っていたが、僕はビジネススーツ姿の彼女しか見たことがなかった。この夜、僕はビジネス服以外の服を着た彼女を初めて見たのだった。
僕は、彼女の美しさに見蕩れ、我に返り、声を出せるようになるまで、ぽかんと口を開けたまま、突っ立っていたと思う。声がかすれていた。
「今夜のあなたは、とても素敵です」
ディアドラは、また例の笑顔をして見せた。あの瞳から光線を発するような笑み。彼女は、にっこりと笑いながら僕に近づき、僕の腕にすがりついた。
彼女の泊まっているホテルは市の中心地にあったので、僕たちは車は使わず、2ブロックほど歩いて、僕のお気に入りにしている店に行った。小さな日本料理店だが、極上の料理を出してくれる。しかも、雰囲気も、日本風ではあるが、過剰に日本風なために客が引いてしまうような雰囲気ではない。
ディアドラは寿司を食べ、とても美味しいと言って、僕を安心させてくれた。僕は、寿司系の男ではない。加熱した食べ物の方が好きだ。でもディアドラが寿司を気に入ってくれて嬉しかった。ともあれ、ウエイターも気配りができるが、わずらわしくなるほどでもなく、その店では二人とも楽しい時間を過ごした。日本酒を飲みながら、僕はオフィスの外で、このように静かにディアドラと一緒におしゃべりができる機会を持てたことに大きな喜びを感じていた。
それでも、二人の間に緊張状態があったことも事実だった。ディアドラは、ホテルで僕に会ったときに僕の腕にすがりついたのだが、あの瞬間、僕のペニスはバネのように息を吹き返し、その後、ずっとその状態が続いていた。そうなったのは、ディアドラのせい。でも、僕自身は、すでにそういう状態に慣れ始めていたように思う。
食事をしながらディアドラとおしゃべりをするのはとても楽しかったけれども、ウェイターがデザートには何をお持ちしましょうかと聞いてきた頃には、僕はすでにかなり限界に近づいていたと思う。ディアドラはデザートのメニューにざっと目を通した後、僕の瞳を覗き込み、それからウェイターに言った。
「デザートは、なしにするわ。私たち、今夜は、デザートに別のものを取る計画をしているの」
ウェイターは勘定書を持ってきたが、僕は、彼に、勘定書をテーブルに置くことすらさせなかった。彼が紙を置く前に、僕のポケットからお札が舞い出て、それとほぼ同時に、僕とディアドラは、テーブルの脇に舞い降りていた。二人、店の外に出たが、僕は、事実上、ディアドラを引きずるようにして、彼女のホテルに向かっていたと思う。ディアドラが欲しくて堪らない。僕の頭には、それしかなくなっていた。