彼女の側から
シャワーを浴び、お化粧をし、服を着てから、ビクトリアがテレビを見ている小部屋に行った。ビックが、男物のジーンズとTシャツ姿でソファに座っているのを見て、ちょっと立ち止まってしまった。こんなことを思いつくべきではなかったのかもしれないけれど、ヴィクトリアに服を買って、それを遊びにすることを楽しみにしている自分がいる。お店に行って、彼をからかったり、時々、彼に恥ずかしい思いをさせたりすることによって、彼を一日中、興奮したままにさせられるかもしれない。
私は、彼が男物の服に変わってしまったのを見て、がっかりした気持ちを口に出し始めたけれど、すぐに、考え直し始めた。彼は、男女の入れ替わりによる一種のパニックになっているのかもしれない。私も、彼が男であることを固守するような状態にだけはさせたくなかった。私は、どっちのペルソナになっていても彼のことを愛している。とは言え、彼を女性化した方が、ずっと刺激的だとも感じていた。
「あなた? 今日はあなたはビックでいることに決めたようね。まだ私とショッピングに行く気がある?」 ビックが断らないようにと期待しながら、にっこり笑って訊いてみた。
「ああ、もちろん。一緒に行くよ。女の格好をして出かけることに、かなり変な感じをしていたところだし。つまり、家にいて、君と女性の格好でセックスをするのは、それはそれで興奮したけど、女装愛好家みたいに女性の格好をして街を歩くのは、僕には賢いこととは思えなくなっていたから。街中に、僕の顧客や友達がいるわけだし、その人たちを失うわけにはいかないよ。僕たちのゲームは、僕たちの中だけにしておこうよ。それでいいよね?」 彼は、出かけようと、立ち上がった。
「いいわ、ビック。ちょっと、あなたが、女性の格好でショッピングをしたら興奮するかも知れないと思っただけ。でも、そうでなくても楽しめるのは変わりないから」
私は、ピンク色の爪のままの彼の手を取って、玄関へ向かった。思い返すと、このところ、私は、いつも頭の中で何か小さな計画を立てているのに気づいた。今も、今日のための計画が頭の中で出来上がりつつあった。さてさて、どうなるかお楽しみ・・・車の助手席に乗り込みながら、私は密かに心の中で思った。
町はずれにできた新しいモールの入り口を入ると、ビックはすぐにスポーツ用品の店に目をつけた。私を引きずるようにしてその店に入り、早速、新しいハンドボールのグラブを買った。
スポーツ用品店を出ると、今度は私がビクトリアズ・シークレット(
参考)の店を見かけ、ビックをウインドウへ引っ張った。ウインドウには、可愛いピーチ色のブラ、パンティ、ガーター、そしてストッキングを身につけたマネキンが飾られていた。ビックが、笑って受け流した後に気がついて、ハッともう一度見返すのを見た。
「この下着のセット、ゴージャスよね?」
ビックは頷きながら、このアンサンブルに目を泳がせていた。レースの飾りや、繊細で女性的なデザインに特に視線を向けている。単に注意を惹かれている以上の魅力を彼に与えているのは確かだった。ビックは、これを見ながら何を考えているのだろうと思いをめぐらす。彼は、かすかに顔を赤らめながら立ち去ろうとした。私は彼を止めた。
「ねえ、ちょっといいでしょう? 中に入って、いくらするのか確かめましょうよ。あなたも気に入ると思うから」