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誰とやったか知ってるぜ 第2章 (7) 


母親が夕食を作っている間、俺はテレビを見て時間を潰した。「夕食よ!」と母親が言うのを聞いて、俺も父親もキッチンへ向かった。

俺は今夜に備えて充分エネルギーを蓄えておくため、がっちり食べた。食事をしながら、親たちと軽く雑談をする。食事の後、どういうわけか、父親が食器洗いをすると言ってくれた。こいつはありがたかった。というのも、出かける時間が迫ってきていたから。

俺は自分の部屋に入り、その後、バスルームに行った。少しリラックスするため、割と長い時間、熱いシャワーを浴びた。今夜を台無しにしないためにも、冷静になる必要があった。シャワーの後、部屋に戻り、ラフな服装に着替える。そしてベッドに横になった。時計を見ると、まだ少し時間がある。だが、俺は急に眠たくなってしまった。ステレオをつけて、またベッドにごろりとなる。そして、俺は気づかぬうちに、眠り込んでしまっていたのだった。

寝返りを打ち、ふと、目を開けた。すでに8時45分になっているのを知り、飛び起きた。素早く着替えの続きをし、好みのコロンを少し体にかけ、歯を磨いた。顔を洗い、部屋に戻って靴を履く。こっそり家をでてガレージに向かった。両親は、俺が通り過ぎたことすら知らずにいた。

自転車に飛び乗り、グラフ先生の家へとペダルをこいだ。先生の旦那がいないのは分かっているが、先生が警察を呼んでいないかどうかは分からない。一旦、先生の家の前を通り過ぎ、1ブロックほど先に行くことにした。

辺りが真っ暗なので、俺は自転車を降り、それを押しながら、グラフ先生の家の裏庭に隣している家の玄関先を歩いた。そのちょっと先にある茂みに自転車を隠す。

裏庭から先生の家の窓を覗き込んだ。先生の姿は見えなかったが、電灯が2つほど灯っているのが見えた。俺は、その隣家の裏庭を茂みごとに休みながら、走り進み、先生の庭に入った。

家の裏手に着く。心臓がドカドカ鳴っていた。正面玄関に行くのはヤバイと思っていたので、ガレージの裏にある網戸のドアが開いているかチェックした。幸運にも、鍵が掛かっていなかった。それを開け、今度はメインのドアのノブを回した。最初、鍵が掛かっていると思ったが、ぐっと力を入れて引いたら、ノブがちゃんと回るのに気づいた。ゆっくりとドアを押して開ける。

中を覗き確かめてから、ゆっくりガレージの中に入った。ガレージの正面ドアの方に進み、ドアのカーテンをそっと横に引いて外を見た。案の定、家の外には車が一台止まっていて、誰か中に座っていた。裏から入って良かったぜ、と思う。

だが、まだ乗り越えなければならないハードルがもう一つあった。ガレージから家へ通じているドアには鍵が掛かっているかもしれないのだ。

そのドアのところに行き、カーテン越しに中を見た。俺のいるところからは、リビングルームに薄明かりが点いているのが見えた。俺は手を震わせながらドアノブに手を掛けた。冷たい真鍮のドアノブを握り、ゆっくり回してみる。ドアがかすかに開くのを知った。

心臓が狂ったように鼓動しているのを感じながら、俺はそっとドアを開け、中に入った。キッチンに入る角のところで一旦止まり、そこから顔を出して確かめる。誰もいない。

グラフ先生の家のキッチンへと音も立てずに入って行った。グラフ先生は家の中もきちんとしているようだ。すべてがちゃんと整理されている。注意しながらリビングルームを覗き込んだ。ちゃんとカーテンが掛かっているのを確かめる。巡回中の警官に、俺が家の中にいるのを見つかるのだけは避けたかった。カーテンが掛かっているので、その心配はなさそうだ。

コーヒーテーブルの上に名刺の束が置いてあるのに気づいた。それぞれの束から一枚ずつ取った。一つはグラフ先生の名刺で、もう一つは先生の旦那の名刺だった。それをポケットに入れ、俺は階段の方へ向かった。寝室に続く階段だ。

ゆっくり音を立てずに一段ずつ上がる。この先に何が俺を待ち構えているのだろう? 俺の指示通りにウエディング・ドレスを着て目隠しをしているグラフ先生だろうか? それとも警官たちだろうか? 最後の一段を登る時、体が震えているのに気づいた。主寝室から薄暗い明かりが漏れている。俺はゆっくりとその部屋へと向かった。

この日、ずっと夢に見てきた寝室のドアの前に俺は来ている。俺は、これ以上ないほど慎重に、ドアの角のところから中を覗きこんだ。そこに見たものに、俺の心臓は鼓動を数回飛ばしたと思う。

俺の指示した通りの格好で、そこにグラフ先生が立っていたからだ。


[2008/04/21] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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