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報復(8) 

バーバラはくるりと後ろを向き、廊下を走っていった。スティーブは、彼女よりゆっくりと、ほとんど、疲れたと言わんばかりの様子で彼女の後に続いた。彼は、この夜のパーティについて、とても明るい希望を抱いていたのだった。だが、その希望も見事に打ち砕かれ、彼は、この2週間ほどずっとそうであったように、陰鬱な気持ちに戻されてしまったのだった。寝室のドアがバタンと音を立てて閉まった。その音が、静かな家の中全体に響き渡った。

寝室の前に来たスティーブは、ドアノブを回してみて、鍵が掛けられていることに気づいた。これも予想したことだった。彼は廊下にあるクローゼットに行き、毛布を何枚かと予備の枕を取ってくることにした。今夜は諦めてリビングのカウチに寝ることにしよう。少なくとも、クリスマス・ツリーの電飾はつけることにしよう。その明かりは、夜の間、ある程度、僕の仲間となって癒してくれるかもしれない。

だが、突然、前に感じた怒りが最大レベルで蘇ってきたのだった。彼は、その感情の高まりについて落ち着いて考えることはしなかった。ドアの反対側の壁に背中を預け、強いステップで前に突進し、片方の肩をドアノブの上3、40センチ辺りのところにぶつけたのだった。何かが壊れる音を出しながらドアが開き、反動で後ろ側の壁にバタンと音を立てて当たった。壊れたドアの破片や木枠が部屋中に飛び散った。

バーバラの悲鳴が長時間続いた。彼女にとって圧倒的といえる驚きだった。この暴力的な出来事に、彼女は対抗する精神力を失っていた。無意識的にわが身を守る姿勢を取り、両腕を前に突き出しながら、夫から後ずさりする。スティーブは、ドアの木枠の残骸を外壁に立て掛けた後、自分の妻に顔を向けた。嫌悪感を顕わにして。

「そこで何やってるんだ! どっか調子が悪いのか?! 僕はさっきから君には何もしていないわけだ。だから、今からも君の体に触れるつもりなんかないのは、君がよく知ってるだろ!」

スティーブはウオークイン・クロゼットに行き、服を脱ぎ始めた。注意深くスーツとスラックスをハンガーに掛け、たった何時間か前にあった場所に戻す。

「あなたと一緒に寝たくないわ」 バーバラの声はかすれ、震えていた。スティーブは、ふんと鼻で返事した。

「だったら寝なきゃいい! だが、今夜は僕はこれっぽっちも間違ったことはしていない。したのは君の方だ。もし、僕と寝たくないなら、そうすりゃいい。だが、今夜は僕は自分のベッドで寝る。もし、ここで寝たくないなら、他に行けばいい。予備のシーツや毛布がどこにあるかくらい、知ってるだろう?!」

バーバラは何も言わなかった。少し間をおき、スティーブはベッドの支度を再開した。彼は、部屋の隅に突っ立っている妻を無視していた。彼女がスティーブの脇をすり抜け、部屋を出て行った時も、彼は彼女を止めようとはしなかった。

一人ベッドに寝るのは寂しかった。スティーブは眠りにつけるまで自分を落ち着かせるのに、長い時間が掛かった。夜明け近くのある時、彼はバーバラが彼の隣に入ってくるのを感じ、一時、目を覚ました。彼女は、同じベッドの上、彼とはできるだけ離れた位置に保ち続けた。スティーブは、鼻を啜り、寝返りをうち、彼女から離れた。そして寝返りの動きが終わる前に、再び眠りに落ちたのだった。

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