1、2分、キスを続けた後、ヘレンはトレーシーの首から右手を離し、トレーシーの左の乳房に触れた。トレーシーの方も、左手をヘレンの足の付け根のVゾーンへ動かした。
それから5分間ほど、ヘレンはトレーシーにキスを続けながら、絶えず、ううん、ううんとよがり声を漏らしていた。その声が突然、ハアハアと息を切らす声に変わった。オルガスムが襲ってきたのだろう。体全体を震わせながら、股間をトレーシーの手にぶつけるように、繰り返し腰を突き上げていた。クライマックスに近づくにつれて、喘ぎ声は、また、よがり声に戻り、そして次に大きな悲鳴に変わった。
ヘレンのオルガスムが落ち着くと、トレーシーはキスを続けながら、手をヘレンの股間から離した。その後も、キスを惜しむように、ゆっくりと唇をヘレンの唇から離す。ヘレンはうっとりとした顔でトレーシーを見上げていた。
「ありがとう。こんな感じになるなんて知らなかったわ。つまり、女の人とすることのことだけど・・・」
トレーシーはにっこり微笑んだ。「女相手でも構わないって気にさえなれば、もっとずっと良くなるわよ。後で、どのくらい良いか教えてあげるわ」
「それはとても嬉しいんだけど、マークについてはどうなの?」 ヘレンは、マークがそばにいるのを思い出して訊いた。
トレーシーはヘレンの唇に優しくキスをした。
「マークは気にしないから大丈夫。でも、彼も後で私たちに加わりたがるはずよ。彼、あなたのことセクシーだと思っていて、あなたとベッドを一緒にしたらどんなだろうと何度も思ってきているのを、私、知ってるもの」
ヘレンは顔を真っ赤にさせた。
「私、全然、セクシーじゃないわ。少なくとも、そう言ってくれた人は誰もいないし」
「いいえ、私は言ってるわよ。それにマークも。ステファニーもそう思ってるのは確かね」
トレーシーは、そう言って、もう一度ヘレンにキスをし、それから自分の寝椅子に戻った。
私は、ヘレンに、大丈夫かどうか訊こうとしたけれど、マリアに声をかけられ、言いそびれてしまった。
「ステフィー? 悪いけど、ランチの準備に手を貸してくれない?」
返事をする間もなく、マリアは私の手を引いて、私を立たせた。それから、引っ張るようにして家の中に連れて行った。
キッチンに入るとマリアが言った。
「邪魔をしちゃってごめんなさい。でもね、ヘレンには、彼女がトレーシーとしたことをあなたが見ていたと知らせたくなかったの」
マリアはカウンターに皿を6枚並べた。
「私、何も悪いことを言うつもりはなかったわ」
マリアは冷蔵庫を開け、中からボールをいくつか取り出しながら返事をした。
「それは分かってるわ。でも、あなたが、ヘレンが初めてのレスビアン経験をした事実について触れるつもりだったことも知ってるの。ヘレンのためにも、あなたがそれを言って、彼女の気持ちを乱させたくなかったのよ。もし、あなたがそのことを言ったら、彼女、多分、恥ずかしい気持ちになって、もう2度と繰り返したくないと思ったかも知れないから。その手のことは、しっかり覚えた方がいいかもしれないわよ」