2ntブログ



バースデイ・プレゼント 第10章 (7) 

ドナは僕の手を引いてレジへ行き、ドレスの支払いを済ませ、僕と手をつないだまま、写真スタジオへと歩き出した。誇張じゃなく、女性らしく腰を振り、ハイヒールをコツコツ鳴らせて歩く僕の姿を、モールを歩いていた通行人たちすべてが足を止めて見ていた。スタジオでは、デビーが僕たちが入ってくるのを見た。口をあんぐり開けて、僕たちのところに近寄ってくる。

「なんと、まあ! これまでうちに写真を撮ってもらいに来た女の人の中で、あなたが一番美しいわよ。本当に! 信じられない!」

他の女性スタッフたちの方を向きながら、デビーは僕の手を取り、くるりと一回転するようにさせた。

「みんな、信じられる?」

全員が、担当していた客をただちに置き去りにし、僕の回りに群がってきた。髪の毛に触れたり、ドレスのひだをひらひらさせたり、僕の手を貴重品を持つような手つきで取って、ネイルを調べたり、顔をじっくり点検したり。くすくす笑って、互いに意見を述べ合っている。

僕はドナを探した。彼女は、この群れから退いて、陰のところに立って見ていた。満面に笑みを浮かべていた。

女性スタッフたちは、徐々に、それぞれの客の元へと戻りはじめ、戻った後は、今の騒ぎは何だったのかをお客にすぐに説明し、その結果、客全員からも驚きの眼差しでじろじろ見つめられることになってしまった。

デビーは僕を奥の撮影室へと連れて行き、撮影が始まった。1時間もの長時間になり、その間、デビーは私を何度もなだめすかしていた。いろいろなイアリングのセットを出して、僕に試しては、撮影を繰り返す。イヤリングは小さく可愛いのもあれば、長く、垂れるのもあった。

それを見てドナが口を出した。

「ビクトリア? 今すぐあなたの耳にピアスをしたほうが良さそうね。そうすれば、もっと良いイアリングを使えるから」

デビーも声を出した。

「私ども、普通はこんなに長く時間をかけないんですよ。でも、お許しがあれば、今回の写真のうち何枚かを総支配人に送りたいと思っているんです。ショップの広告用の写真にしてもらうために。誰も、あなたが女性じゃないことに気づかないと思いますわ。その点は、私たちの間でのちょっとした秘密としますので」

僕が答える前にドナが返事をしていた。興奮した口調で、どれでもお好きな写真を使ってくださいと答えている。

「素敵! それに、ご返金もしますね。多分、今回の撮影代全額に加え、もし、また当店をご利用していただけるならの話しですが、次の撮影の分もまかなえる額になると思いますよ」

「まあ、ビクトリア。そうしましょう? いいでしょう?」

ドナは、僕にそう言ったあと、デビーが言った言葉の意味を思い出し、デビーの方を向いて、「もちろん、またこのスタジオに来ますわ」と言い、また僕の方を見て、「いいわね? ミス・ビッキー?」と訊いた。

僕はドナの僕に対する口調が急に変化したのに気づき、すこしうつむき、伏せ目がちになって返事をした。

「それであなたが満足なさるなら、私にとっても嬉しいことです」

お尻を打ち据える乗馬ムチのことが頭に浮かび、そのように慎ましく答えるほかなかった。

「素晴らしいわ」 とデビーは僕を無視してドナに答えた。「彼女なら、きっと素晴らしいモデルさんになると思いますわよ」

[2008/07/31] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する