「Exam 検診」 by deirdre
「3番の方、右へどうぞ」
クリップボードを抱えながら看護婦が言った。俺は、自分の装置を左に持ち、ドアの番号を見ながら廊下を進んだ。どういうわけか、俺はいつも病院に来るとおどおどしてしまう。今回は、ただのありきたりな検診なのだが、やっぱり同じだ。リーグが、俺が試合中に心臓発作を起こしたりしないことの保証を求め、検診を受けに来たのだ。
部屋の前に来たので、ドアのノブを回し、押し開けた。
中には人がいた。
「おっと、失礼」
俺はそう言って、引き下がった。そして、中を見つめたまま、唖然とした。
看護婦が俺の方を振り返って、俺の顔を見ていた。にっこり笑っている。まるで「あなたも私と同じく、これ、楽しいでしょう」と言いたげな笑い顔だった。だが、俺がたじろいだのは、患者の方だ。診察台に男が横になっていたのだが、素っ裸だったのだ。
俺はすぐにドアを閉め、自分が注意散漫だったことに気がついた。ドアの番号は2だったのである。
すっかりドキドキしながら俺はそのドアの前に立っていた。あの男、目隠しをされていた。しかも、うつぶせになって、手首と足首はカンバス布の拘束具が巻かれて、テーブルの四隅に縛り付けられていたのだ。
俺は廊下を進み、3番の部屋を見つけた。
それにあの看護婦! 彼女は両手にゴムの手袋をはめ、何かキラキラした金属製のものを持っていた。あれが何かは俺は知らない。ただ、長さ20センチ、太さ5センチくらいの小さな棒のようなもので、一方の先っちょが丸くなっていた。
俺は3番の部屋のドアをちょっと開けて、中を窺った。誰もいないのを確かめて、中に入り、ドアを閉めた。
椅子に腰を降ろす間もなく、ドアが開き、クリップボードを抱えた看護婦が入ってきた。彼女は、そのボードに眼を落とし、それから顔を上げて俺を見た。
「オーケー、服を脱いで、診察台に腰を降ろしてください。脱いだ服はその椅子に掛けて構いませんよ」
看護婦が説明している間に、後ろから男の医者が現れ、立ち止まって彼女に話しかけた。看護婦が医者に答えた。
「2番は準備が整いました」
「ジュリーはあっちに?」
「ええ」
医者は立ち止まって俺を見た。「こちらは?」
「次の人です」
「分かった。ちょっと一緒に来てくれ。2番の手伝いをして欲しいんだ」
看護婦は医者と一緒に部屋を出て、またドアが締まった。
俺は、何か変なことが起きてるなあと感じながら、1分ばかし突っ立っていた。まあとりあえず、俺は服を脱ぎ始めた。あの医者、俺を見たとき、視線がちょっと俺のズボンの方へ下りたような気がした。
そんなことを考えていたら、隣の診察室のドアが閉まる音が聞こえた。それから人の話し声も。何を話してるかまでは聞き取れなかったが、男と女が話してるのは確かだった。そして、その後に、笑い声が聞こえた。高笑いしたりくすくす笑ったり。
俺はパンツ1枚になっていたが、診察台に座らずに、壁の横に立って、聞き耳を立てた。またくすくす笑う声が聞こえる。その後、ピシャリと叩くような音がした。4回だ。そして、また話し声とくすくす笑う声。
それから歩く音とドアが開く音がした。俺は、盗み聞きしてたのがばれないように、診察台に戻った。俺の部屋のドアが開き、またクリップボードの看護婦が現れた。