「よろしいですか? サンフォードさん?」 看護婦はドアを閉めながら言った。そして、俺の姿を見る。
「あら、だめですよ。それも脱いでください」
看護婦は、壁に装着されている血圧計から、ゴムホースを解いていた。俺は、ただ、座ってそれを見ていた。看護婦は、血圧計のバンドを俺の腕に装着する準備をし、聴診器を耳に当てると、再び俺を見て言った。
「さあ、早く。脱いでください」
俺は立ち上がって、下着を脱ぎ、他の服と一緒に、椅子の上に置いた。看護婦は、ちょっと微笑み、俺に近寄るように身振りで示した。血圧を測るらしい。
指示されたとおりに近寄った。看護婦と30センチくらいしか離れていない。看護婦は、俺の腕を、脇の下に挟みこみ、血圧バンドを巻きつけ、ポンプで空気を送り始めた。
俺は素っ裸なのだ。この状況はどう見ても変だ。だが、看護婦の方は、まったく事務的に作業している。すぐに血圧の計測が終わった。
「じゃあ、今度はテーブルに仰向けになってください」
俺は、看護婦の顔を見た。・・・一体、何が始まろうとしてるのだ? 多分、俺の身体に電極をつけて、心臓の状態を調べようとしているのかもしれない。だから俺に横になれと。それは理解できるが、ただ、さっき目撃した、隣の診察室でのことが引っかかっていた。これまでは、そういうことを始める前に、まずは俺の胸に聴診器を当て、いろいろ問診するのが普通だったじゃないか。
「さあ、早く」
言われた通りにしたが、俺は恥ずかしかった。こんな、素っ裸の状態なのだ。仰向けで。実際、看護婦が俺のアレに目をやるのを見た。だが、ちょっと目をやるだけで、それ以上のことはなかった。
「よろしい、では、今度は、うつ伏せになってもらえますか?」
看護婦は手に目隠しを持っているではないか!
「早く!」
「一体何をしようと?」 と言って、俺は口をつぐんだ。
「心配なさらなくていいのですよ。言われた通りにしていれば」
看護婦の口調にどこか楽しんでいるような気配があった。ともかく、目隠しを手にしたまま、俺がうつぶせになるのを待っている。仕方がなく、俺はうつ伏せになった。カウンターを見たら、拘束具が置いてあった。あの男につけられていたのと同じような。
「さあ、行きますよ!」
俺がうつ伏せになるとすぐに、看護婦は俺に目隠しをつけにかかった。
「こりゃ、一体何なんだ?!」
俺はあわてて叫び、素早く身体を起こした。こんなの、真っ当な診察じゃない。
「お願いします、サンフォードさん。もう一度、横になってくださいよ」
俺は看護婦の顔をじっと見た。変だ。変すぎる。
「一日、サンフォードさんに付き合ってるわけにはいかないんですから」 少し困った顔をして、そう言う。
「気にしないでくれ」
俺はそう言って立ち上がり、下着を取り、着替え始めた。
「サンフォードさん!!」
「俺は帰る。何だか知らんが、俺は、こういうのは必要ないんだ」
服を着て、廊下に向かった。看護婦は、俺がしていることが信じられない面持ちで、呆然として俺を見ていた。