ブリイはバスルームに戻り、ショートパンツとタンク・トップを手にした。ビリーも彼女の後をつけてバスルームに入り、彼女の腰に手を添え、後ろから抱き寄せた。お腹がぐうーぐうーと間抜けな音を出し始める前にブリイが示していた、あの艶っぽい欲情を再び燃え上がらせようと、彼女の首筋に甘くキスをする。
だが、ブリイは、頑として、それに反応しなかった。ビリーは、その理由を知っていた。たいていの南部女性が持っている、あの母性本能が働いているのだ。愛する男性が空腹でいることなど、絶対に許されないことと感じているのである。それに、ブリイは、愛らしく純朴な性格であると共に、非常に頑固な一面も持っていることを彼は知っていた。ブリイは、二人の初夜を祝う前に、まずは夕食を食べなければならないと、気持ちを固めたのである。これを曲げさせることはできないのだ。
二人はレストランへと向かった。ビリーは、ジーンズの中、痛いほど勃起を続けたまま。そして、ブリイは、自分の夫に食事をさせてあげなければと、それだけを思って。
レストランと言われていた店は、実際は、食事どころと言うよりバーと言ったほうが良いような店だった。新婚の若い二人は車を止め、まともな食事が取れるのだろうかと少し心配しながら入り口をくぐった。
その店は、外見は少し寂れた感じに見えたが、店内は、ビリーたちが地元で一緒に週末を過ごして楽しんだ店と、さほど変わらない印象だった。ジュークボックスからはカントリー音楽が流れ、常連客が何人か、まともと思われる料理を食べている。バーの向こうの方ではビリヤード台があって、プレーをしている。
ブリイは、ビリーに向かって、ビリヤードの方を指差し、にっこり微笑んだ。ビリーも微笑を返す。彼は、故郷でビリヤードをして楽しく遊んだことを思い出していた。彼は、なかなかのプレイヤーで、実際、大学時代は、賭けビリヤードをして学費をまかなったほどだった。ビリーは、注文はバーテンへと指示する張り紙を指差した。
バーテンダーは、かなり、いかつい風貌の男だった。ビリーとブリイが近づいてくるのを見ていた。特にブリイの方を中心に見ていたと言ってよい。タンクトップは、大きな胸をぴっちりと包み込み、その裾はおへその上までしか来ていない。デニムのショートパンツも、タンクトップと同じように、腰から尻をぴっちりと包み込み、むっちりとした太腿の付け根のところで止まっている。
ビリーは、メニューをくれと言って、ブリイを凝視したままのバーテンを我に返させた。バーテンは、ビリーにメニューを2枚渡し、バーカウンターの先にあるブースに行くよう指示した。
料理は、変わった飾りつけはなかったが、味自体は美味しかった。ビリーは、食事をしながら、バーテン兼ウェイターの男が、いつもブリイの胸を見ながら話しかけてくることを、少し楽しく感じていた。ブリイも彼の視線に気づいており、顔を赤らめていた。バーテンは、多少、振る舞いが無遠慮なところがあるが、その他の点では危険性がないようだった。食事を終えたビリーとブリイは、バーカウンターに戻り、支払いを済ませた。
出口へと歩きながらブリイが訊いた。
「ちょっとビリヤードで遊んでいく?」
ビリーは彼女の耳元に囁いた。「いや。すまないが、僕はモーテルで、最高の女とデートをすることになっているんだ」
ブリイはニヤリと笑い、からかい気味に言った。「お願い、私のために1ゲームだけやって見せて。そうしたら、それに見合ったことをしてあげるから」
ビリーは、嬉しそうに目を丸くした。「分かった。じゃあ、軽くやって済ませることにするよ」