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無垢の人質 第3章 (1) 

「無垢の人質」 第3章 Innocent Pawn Ch. 03 by wishfulthinking

鋭く射抜く褐色の瞳をした憎らしい男。あの男が戻ってきた。それをイサベラに警告し、知らせるのは、鋼鉄と扉と石壁とをつなげるかんぬきが滑る音だけ。

彼が入ってきたとき、イサベラは出窓のところに座っていた。我が身を守るように両腕で脚を抱え、あごを両膝の上に乗せ、丸くなっている。裸体を隠す衣類はすべて奪われていた。その代わりに、大きなベッドのシーツを小さな身体に幾重にも巻き付け、シーツの両端を首の後ろで結んでいた。

レオンは、王の如く、堂々と部屋へ入り、眉をひそめつつ彼女を見やり、召使が前もって用意していた皮袋からゴブレットにワインを注ぎいれた。それを持ち、暖炉のそばに立つ。鋭い視線を彼女の体を足の先から頭まで走らせる。

「この部屋に囚われている時は、その美しい体をわしの目から隠してはならない。分かったかな?」

レオンは優しい口調でそう言い、金色のゴブレットに二杯目のワインを注いだ。

「あ、あなたは私に・・・」

遠く下方に見える、四方を壁で遮られた小さな庭を見下ろす出窓から腰を上げながら、イサベラは、怒りに息を切らせて言いかけた。小さな手で、幾重にも重ね巻いた身体を守るベッド・シーツの裾を不安そうに掴む。

「分かったかな?」 レオンは冷たく繰り返した。この口調、レオンの友人たちなら、反論を許さぬ口調であることを知っている。

悔しさに、モスグリーンの瞳を大きく見開きながら、イサベラは頷いた。この男が、自分を修道女の住処から奪い去り、目の前で、衣類を剥ぎ取り、全裸にさせたことを思い出す。

イサベラは、くるりと向きを変え、レオンに背中を向けた。震える手で、首の後ろの結び目を探る。両目を固く閉じながら、生地が身体を優しく撫でながら落ちていき、足元に降り畳まるのを感じた。

「こちらを向くのだ」

命令に従い、ゆっくりと向きを変えた。恥辱に伏せ目になって床を見ながら、両手で小さな乳房を隠す。

「わしがこれから何をするか、分かっておるな?」 

レオンは優しく問いかけた。そして静かに、そして素早く部屋の中を進み、イサベラの前に立った。指を一本、彼女のあごに優しく添えて、顔を上げさせる。

イサベラは、頷きつつも、レオンの視線に目を向けることができず、目をそらした。

レオンの大きな左右の手が、なだめすかすようにイサベラの両手に添えられ、彼女の胸から離させる。

「イサベラ、今日は苦痛はないだろう。約束する。悦びだけのはずだ。それも極上の悦びだ」

レオンの指の背がイサベラの頬を撫でた。イサベラは身体を震わせた。


[2008/08/27] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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