自転車のスピードを落とし、角を曲がった。4軒先に目的地の家がある。周りには誰もいない。
自転車から降りて、家に近づき、家と家の間に自転車を隠した。玄関先が明るい照明で照らされているので、家の間はかえって暗くなって何も見えない状態になっている。
心臓がドキドキしていたので、乱れた呼吸が直るまで、少しそこに立って休む。それから素早く、裏庭をチェックした。誰もいないのを確かめる。
向こうにはグラフ先生の家が見える。部屋の明かりが点いていたから、多分、家にいるのだろう。と言うことは、俺が家に戻った時には、先生からのメールが来ている可能性が大きいということだ。
家の裏側の暗がりを進んだ。キッチンテーブルの前の窓はカーテンが開け放されていた。そこから注意深く中を覗きこんだ。俺のいるところからだと、キッチンとリビングが見渡せた。誰もいない。
さらに先に進み、次の窓のところに来た。ここは暗くなっている。どうやらバスルームのようだ。次の窓が寝室の窓なのかもしれない。
だがその窓は高くて、覗き込むことができなかった。だが、家の裏手に牛乳を入れる木箱があるのを見つけた。その木箱を窓のところに運び、それに乗っかった。
ゆっくりと、非常に注意深く顔を上げ、窓の中を覗いた。カーテンは閉まっている。だが、中が見えるような隙間が少しだけあった。そこから覗いたが、ここは寝室ではなかった。それに誰もいない。
その部屋の奥、ドアの向こうに目をやった。ドアの先、廊下の反対側の部屋が寝室になっていた。そして、俺は牛乳箱からあやうく落ちそうになってしまったのである。そこで起きてることを、一部だが目にしたからだ。一部分だけとは言え、それで充分だった。
ブラッドのママがベッドに仰向けになっていた。お腹のところから頭までが見えていた。上半身裸になっていて、頭を前後に振っているのが見えた。寝ながら、うんうんと頷いているような格好だ。
俺はカメラを持ち上げて、写真を撮ろうとしたが、撮影不可の表示が出てしまった。これでは、まともな写真が撮れない。
俺は牛乳箱から飛び降り、ガレージ脇に戻った。ガレージの中に通じている、小さな入り口があったからだ。そこのドアノブに手を掛けた。心臓がドキドキいっている。回してみると、思ったとおり、鍵がかかっていなかった。ゆっくりとドアを押して中に入った。
心臓の鼓動が聞こえる。額に汗が出てきた。ガレージの中、車の横を過ぎ、さらに家の中へ通じているドアに向かった。引き戸式の扉で、静かに横へ滑らせて開ける。
「お願いだ、犬を飼っていませんように!」
そう独り言を言いながら、中に足を踏み入れた。音が出ないように戸を閉め、注意深く、角から家の中を覗きこんだ。
前方には障害物なし! 俺は静かにつま先歩きでキッチンの中を歩き、寝室へと向かった。キッチンのカウンターのところに名刺のストックが置いてあった。そこから1枚取って、ポケットに突っ込んだ。
リビング・ルームの入り口に差し掛かり、ゆっくりと角から頭を出して中を見た。誰もいない。この家には他に誰もいないのだと知り、大きく安堵した。寝室から流れてくる音楽のおかげで、俺が音を立ててしまっても聞こえないだろう。リビングの前を通り過ぎ、さらに廊下を進んで寝室へと向かう。
とうとう、寝室の入り口に来た。ドアは開けたままになっている。この向こうでは、俺の親友の母親が、夫以外の男にセックスされようとしているところなのだ。部屋の中からは、音楽と共に、色っぽい喘ぎ声が聞こえてくる。ズボンの中、ちんぽがみるみる固くなってくる。