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報復 第1章 (1) 

「報復」 第1章 6月中旬

不倫がばれるのには、実に様々な方法がある。電話の会話を聞かれてしまうときもあれば、パソコンのモニターに見える形で残してしまったEメールを見られてしまうこともある。携帯電話のメモリから削除せずに残ったメールのメッセージという場合も。友人や職場の同僚や家族の誰かが、道をはずれた妻や夫が他の人と会うのを目撃してしまうチャンスはいくらでもあるものだ。時に、不倫をする者が実行犯で捉えられてしまうこともある。例えば、配偶者が予定より早く帰宅してしまったときなど。それに、寝言でばれてしまうという哀れな者もいる。

少し考えてみれば分かることだが、情事がばれる方法は何千とあるのである。例えば、スティーブ・カーチスの場合は、自分の妻の不貞を新聞で読んだのだった。

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彼は普段、新聞を読まない。ニュースは、いつもオンラインで読むか、たまに夜の報道番組で見る。スティーブの兄のジョンは、このようなスティーブの習慣について、その嫌悪感を隠そうともしなかった。ジョンは、地元のフォックス・テレビ局の報道部長である。彼は、スティーブが地元局の報道番組を見ようとしないことを、個人的な侮辱と感じていたのだった。

ではあるが、一方、歯科医院の待合室においては、男というものは気を紛らわすためなら、ありとあらゆることをするものである。ラックにある雑誌をすべて読み漁るだろうし、天井のタイルにある穴をすべて数えたりもする。ああ、いやだ。こちらからは見えない治療室から聞こえてくる、あのドリルの音。あの音から気持ちを紛らわすためなら、どんなことでもするだろう。なんなら、2日前の古新聞ですら、読み始めるものなのだ。

スティーブが新聞を読むとしたら、それは社交欄ではありえない。国内政治の欄はもちろん読むし、その後はスポーツ欄へと飛ぶ。だが、彼は、地元の町のお偉方の行状などにはまったく興味がなかった。彼は、素早く求人・探し物広告の欄をすべて読んだ。実際、モーターボートの広告には興味を惹かれ、時間ができたときに調べようと、その電話番号をメモした。向こうから聞こえてくる歯医者のドリル音が、急に甲高くなった。彼は、あれは本当にドリルの音ならいいのだが、と感じた。

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