少し考えてから、キーボードをたたき始めた。
「おやおや、グラフ先生。教師にしては、ずいぶん乱暴な言葉遣いじゃないか。俺は誰かって? 俺は、先生を次のレベルに引き上げた男だよ。先生の人生が、何のためにあるか、そいつを教え込んだ男だ。先生の運命を成就させる男。グラフ先生、お前はこれから俺を『ご主人様』と認識することだな。これからは俺をご主人様と呼ぶのだ。分かったかな? それを守らない場合は、お仕置きをすることにする。俺が命令することをすべて実行すること。さもなければお仕置きだ。この状況では、俺の方が優位に立っているのであるから、警察には通報しない方が良いだろう。すぐに返事を書くこと。さもないと、皆にばれることになるだろう」
送信ボタンを押し、メールを送った。
次に、俺は、先に見つけたウェブサイトを検索した。問題のクラブの住所を確かめたかったからだ。住所は、確かに、俺がメモ書き下通りだった。スクリーンの最下部に詳しい説明があったが、全然、意味が分からなかった。「ボストン風クリームパイを注文せよ」とある。何度も読み返した。
もう一度、例のレストランに行き、チェックして見なければならない。ひょっとすると何か手がかりがあるかもしれないから。多分、夜になると、何か変わったことがあって、それによってクラブにたどり着けることになるかもしれない。多分、秘密クラブであって、「ボストン風クリームパイ」というのはパスワードか何かなのだろう。
ネット接続を切ろうとした時、新しいメールが来た。思ったとおり、グラフ先生からのメールだった。
「この最低野郎! すぐに、結婚指輪を返しなさい! 自分のことを何様だと思っているの! あんな卑劣なことをして、よくもしゃあしゃあと生きていられるわね。本当に最低。クズだわ。ただちに指輪を返してくれたら、あんたがしたことを忘れてやっても良いわよ。だから、お願い。もう、こんなことはやめて、指輪を返してちょうだい。」
俺は笑いながら、返事を書き始めた。
「グラフ先生? お前のことは、従順な生徒だと思っていたが、それもさっきまでの話だな。お前は俺の命令に従わなかったようだ。ゆえに、お前にはお仕置きをしなければならない。きちんと躾けを守らないとどうなるか、みっちり調教してやることにしよう。お前の旦那が明日、出張から帰ってくるのことは、すでに知っている。明日こそ、ご主人様である俺に、お前がお仕置きを受ける時だ。お前と旦那がベッドに入り、旦那が眠りに落ちた後、お前はベッドから抜け出てくるのだ。身につけるのは、ハイヒールに、ストッキングとガーター。その上にローブを羽織ってくること。静かにリビングルームに降りて来て、玄関の鍵を外し、窓の横の明かりを灯すこと。自分で目隠しをし、背中を向けて俺が来るのを待っているように。完全に真面目に言っているのだからな。この命令に従わないことなど考えるんじゃないぞ。お前自身、これに興奮しているのはお見通しなのだ。自分の夫が近くで眠っている時に、ご主人様のちんぽを出し入れされること。それを考えただけで、気が狂いそうに興奮しているはずだ。このメールを読んだだけで、まんこがびちゃびちゃになっていることだろう。すぐに、返信するように。ご主人様から」
メールを送り、パソコンを切った。それから階下に降り、ガレージに出た。親たちはテレビを見ている。俺はこっそりと自転車を引きながら外に出た。そして、例のレストランに向かった。何としても、例のクラブを見つけ出してやる。
急いで向かったが、あまり汗をかかないように注意した。レストランの駐車場に自転車を止め、街路灯の柱に立てかけ、レストランの入り口に歩いて行った。中を覗くと、客が数名いて、遅い夕食を取っている。ドアを引いて、中に入った。
座席に案内されるのを、心臓をドキドキさせながら待った。少し経ち、可愛い感じのウェイトレスがやってきた。
「お一人様ですか?」
頷くと、ウェイトレスは後についてくるように合図をした。隅の目立たないブースに案内される。ウェイトレスはメニューをテーブルに置き、後で注文を取りに来ると伝えて、他へ歩いて行った。いろんなことが頭の中を駆け巡り、なかなか落ち着かない。そうこうしている間に、ウェイトレスが戻ってきてしまった。
「ご注文はお決まりですか?」
つまらないヘマをしでかさないようにと案じながら、例の言葉を言ってみた。
「ボストン風クリームパイを」
ウェイトレスは目を見開いて、俺の目を覗き込んだ。
「す、すぐに戻りますので、お待ちください」
ウェイトレスは、そう言って、奥へ引っ込んで行った。厨房とは違う、小さな事務室のようなところへ入っていく。ちょっとした後、ウェイトレスが出てきた。俺のところには来ず、別の客の応対へと向かった。