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Experiment 実験 (1) 

「Experiment 実験」 by deirdre

初めて、マイケルズ先生と会ったのは、ルームメートのシンディと一緒にキャンパスを歩いていた時だった。偶然、先生の顔を見かけたシンディが、呼び止めて私を紹介してくれたのだ。

「こんにちは」

先生は、親しみ安そうな雰囲気で、私に声をかけてくれた。でも、どこか、一緒にいて居心地が悪くなるような雰囲気がある人だった。

私が先生のクラスに登録するまで、先生に会ったのは、それだけだった。正直、私は先生の授業に出る必要はなかった。学位のために心理学系の授業で取らなければならないのは一つだけだったし、すでに入門コースの授業を取り終えていたからだ。でも、シンディに、是非とも、もう一つ取っておくべきと言われ、取るとしたらマイケルズ先生の授業にすべきと言われたので、仕方なく、選択授業として登録したのだった。どうしてシンディは、特にマイケルズ先生の授業を取るよう、あんなに声高に言い張ったのか、ちょっと変な感じがしたのは事実だった。

でも、授業が始まると、マイケルズ先生はとても魅力的な先生であることが分かった。それに、彼女は、私たち学生にとっても優しくしてくれる。学生の誰にでも、すれ違った時などに、いつも、立ち止まって話しかけてくれる。ある日、課題を取りに、先生の研究室に行った時があったけれど、結局、一時間も先生とお喋りを続けていた。どの教授たちも、先生と同じように、気軽に付き合えるようになってくれたら良いのに、と思った。

それで、ある日のこと、授業が終わったあと、私は先生のところに立ち寄って、お喋りをしたのだった・・・ただ、なんとなく、先生と話したい気持ちになっていたのだと思う。先生と会って、少し、雑談した時だった。先生が、一緒に夕食に行きましょ、と私を誘ってくれたのだった。私はすぐに賛成した。そして、結局、私と先生は、とあるバーに行って、ちょっとしたオードブルを食べていたのだった。

その夜は、先生といろんなことをお話しした。話しの話題は、いつの間にか、男性のことやデートのこと、そしてセックスのことになっていた。すでに何杯かお酒も飲んでいたからか、私は先生に、他の時なら誰にも話さないような個人的なことを話していたと思う。でも、先生は、とっても、話しやすい人だったから。

「ねえ、君は女性に惹かれる感じがしたことはある?」

先生は、私がバイセクシュアルかどうか訊いていた。どうして、この話題になったのか覚えていないけれど、全然、場違いで不自然な質問ではなかったと思う。先生は、私がちょっと沈黙したのを見て、それが答えだと解釈したようだった。

「真剣に惹かれたこと、っていう意味でよ?」と先生は付け加えた。

「何と言うか・・・」

「あら、何も恥ずかしがることじゃないわ」 先生は、私の秘密の気持ちを察してしまってるの? 「だれか、可愛い同級生とか・・・誰が、お気に入り?」

「これって、恥ずかしすぎるわ、先生!」

「心配しないで、大丈夫だから。心に思っていることを他の人に話すことは、精神上、良いことなのよ。私を信頼して。で、誰?」

「あの・・・」 私は、そこでまた、間を置いた。「・・・チアリーダの一人のことを・・・ブルネットの髪の子なんです」

このことを誰にも話したことがなかったし、話すなんて予想もしていなかった。でも、実際、私はそのチアリーダに惹かれていたのは事実だったし、夜に、彼女のことを思っていることも、時々あったし、彼女を見かけると、実際、少し興奮するのも本当だった。

「その子のことを知ってるの?」

「いえ、全然! ・・・ただ、試合で見かけるというだけです」

「なるほど。単に心を惹かれているということだけなのね。大丈夫。恥ずかしがることはないわ。私たち女性には、珍しいことじゃ全然ないんだから」

先生は、それから、いろいろ話して、そういう感情を抱くことには、何も恐ろしいことなどないと、私に言い含めた。私は、内心、この種の感情にはずいぶん悩まされていたのだけれど、そのことについては先生に漏らしたりはしなかった。ともかく、この話題については、会話は、それだけだった。この日の後は、私は、この会話のことをほとんど忘れていたと思う。

[2008/10/06] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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