暗闇の中、イサベラは、自分の周りの空気が動くのを感じ、レオンが動き回り、その巨体によって空気が動いているのだと察した。そして、次に、彼が石段を上がっていく足音を耳にした。レオンは自分を置き去りにしようとしている! イサベラは泣き声になって言った。
「いや、お願い! 置いていかないで!」
「静かにするんだ」
扉が開き、そして閉まる音が聞こえた。完全な暗闇の中、扉が閉まった重々しい音が部屋に響き渡った。
ここは地下牢なのだろうか? あの男は私を死ぬまでここに閉じ込めようとしているのだろうか?
イサベラは自分の運命について考えながら、恐ろしい予感に心を乱した。あの人でなし! けだもののような人間!
少し経ち、レオンが戻ってくる音を耳にしたイサベラは、安堵のあまり声を上げそうになった。たいまつを手にして入り口に現れた彼を見て、頬を濡らす涙を拭う。この場所は小さな個室になっているようだった。レオンが部屋の中へと歩みを進めるに連れて、たいまつによるほのかな明かりが暗闇を押し退け、部屋の中が照らされていく。そして、それに連れて、イサベラは再び強烈な恐怖感に襲われたのだった。
彼女は、それまでの人生で、この時ほど恐怖を感じたことはなかった。緑色の目を大きく見開いて、窓のない石壁の室内の様子を見つめる。磨きあげられた責め具、鞭、そして拘束具の数々が、奥の壁に沿って並べられている。低い天井や壁からは、幾つもの吊り鈎が降りていた。イサベラは息を詰まらせ、恐怖におののいた目でレオンの顔を見やった。
「い、いや!」
全裸の体を守るようにイサベラは石台の上、身を縮まらせた。この石台は長い幅広のテーブルとなっており、その四隅には金属製の手錠が鎖と共に装着されていた。彼女は、その手錠から、できるだけ距離を取ろう、台の中央、体を丸めたのである。
「お願い・・・」
レオンはイサベラの様子を無視したまま、手にしていたたいまつを、壁にある金属製のたいまつ受けに差込み、奥の壁へと歩み、その道具類の前に立った。堂々と足を開き、腰に両手を当てて見ている。イサベラは、レオンが熟考しつつ、皮の腕輪と、細長い取っ手のついた小さなへら、それに羊毛でできている黒いスカーフのようなものを手にするのを見た。レオンは、それらを手に振り返って、彼女と対面した。イサベラは、レオンの表情に息を飲んだ。
「こちらに来るのだ」
レオンの命令に、イサベラは、何か恐怖の混じった感情に、ぞっとするような冷たいものが背筋を走るのを感じた。
イサベラが恐怖のあまり体を凍りつかせ動かないのを見ると、レオンは彼女の方へと進み、持っていたアイテムを石台に放り投げた。そして怖気づいて逃れようとするイサベラの両上腕をがっちりと押さえた。イサベラは、あっと声を上げる間もなく、その姿勢のまま、石台から体を持ち上げられ、逞しい胸板へと強く抱き寄せられた。
「わしに逆らえば逆らうほど、これは厳しいことになるのだぞ」
レオンはイサベラの耳元に囁いた。