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Fashion ファッション (2) 

本当に、フェイスは美しかった。一緒にハネムーンを過ごしたハワイのビーチでのビキニ姿のフェイス。ホテルの部屋に戻り、日焼けの肌を露わに、全裸になったフェイス。旅行中、谷間を飛行機で飛んでいた時の、ショートパンツとホールター姿(参考)のフェイス。そのような彼女の姿を毎日、目にできるなら、いつでも仕事を辞めて、ホノルルに引っ越しても良いとさえ思った。でも、旅行から帰ってきた後も、フェイスは同じく美しく、僕は、毎晩、仕事から帰って彼女に会う、その瞬間のために生きているように思っていた。

「そうよ。ここで、彼、初めてあなたのことを見たのよ」

僕とマーサは、フェイスと一緒にランチを食べようと、リードのお店に来ていた。フェイスは、僕が彼女を見た時の話しを、それまで聞いたことがなかった。興味を持ってる様子だった。

「見ず知らずの女に釘付けになったの? でも、マーサは、ブラインド・デートを考えたのはマーサ自身だって私に言ったのよ!」

「罠に嵌められたのさ。うーん、でも、バレた以上、僕たち離婚して、それぞれの人生を歩んだ方が良いかも」

「いいえ、あなたは私を押し付けられたのよ」とフェイスは言い、それからマーサに向かって、「でも、あなたは、絶対に許さないからね!」

僕は、マーサがフェイスの言いがかりを受け、同じような言いがかりで口答えするのを見ながら、初めてフェイスを見た後にマーサとした会話を思い出していた。僕が今こうしてフェイスの隣に座っているなんて、あの時には信じられなかっただろうなと思っていた。フェイスは、よく、僕をこんな気持ちにさせる。何か不思議な感覚で、しばらく、うわの空になってしまうのだ。

ようやく現実に戻った時には、二人の会話は映画の話になっていた。

「いえ、私、その映画、もう妹と一緒に見たのよ」 フェイスが喋っていた。

「どんな映画だった?」 とマーサ。

「最高だったわ。ぜひ、見なきゃダメ!」

「そうねえ、独りで見に行くことになっても、今夜、見に行こうと思うわ」

独りで映画に行く? 僕もよくそうしていた。でも、ここしばらくは、なかった。フェイスと出会ってからは一度もないのは確かだ。

僕はマーサの顔を見た。僕の知る限り、マーサはあまりデートをしていない。もっと言えば、彼女がデートの話しをするのを一度も聞いたことがなかった。

「ねえ、あなた。あなたがマーサと一緒に行ったら?」 フェイスはそう言い、その後、マーサに向かって、「彼、私がその映画をすでに見てしまったので、どうするか迷っていたのよ。彼と一緒に行って。いいでしょう?」

マーサは、僕がどんな反応をするのか知るのが嫌そうな顔で僕を見た。僕には、良いアイデアのように思えた。もっとも、それをフェイスが言い出したことに驚いてはいたが。フェイスは、独占欲が強いところがあるから。

ともかく、フェイスは喜んでいるようだし、マーサは、どう返事してよいか分からないようだったので、僕は、マーサに軽く微笑みかけ、頷いて見せた。

「私のこと本当に信じられるの?」 マーサがフェイスに言った。僕はマーサの顔にユーモアの印が浮かんでいるか、探したが、そんな表情が出てたかどうか、よく分からなかった。

フェイスは、くすくす笑い出した。「あら、私、彼のことは、充分、魅了していると思ってるわ」

そういうわけで、僕は8時半にマーサを迎えに行くことになった。


[2009/02/18] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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