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報復 第8章 (8) 

バーバラがラファエル・ポーターと公園で二人っきりでいるのをスティーブが見つけた8~9ヶ月前から、バーバラは、ずっと冷たく、よそよそしい態度を取っていた。あからさまに敵対的だったと言っても良い。スティーブは、彼女と別居していた間、バーバラに会わないことに慣れきっていた。そのような状態に慣れることは、たいした難しいことではなかった。怒りのおかげで、容易に、回りに彼女がいないことに慣れることができていた。

だが、自分の結婚生活に終止符を打つことになるだろうと予想した、まさに、その晩に、バーバラが姿を現したのだった。まるで、待ち伏せされたようなものだった。

スティーブは、やり残したことをすべてきれいに整え、後は、このことすべてから解放されるとばかり思っていたのである。キンバリーの薬物中毒を暴露し、さらに彼女とセックスをしたことで、鋭いナイフで引き裂くのと同じように、バーバラとの関係を、一撃で永遠に断ち切ることになるだろうと考えていたのだった。確かに、バーバラは怒りを見せた。だが、それは、ほんの一瞬だけで、その後は、何もなかったような態度を示したのだった。これにはスティーブはとまどった。もちろん、彼はすぐにカウンセリングの場から立ち去ったが、しかし・・・

しかし・・・バーバラは彼の後を追いかけてきて、コーヒーに誘い、自分が家に戻るのを認めるべきであると、論理的な説得を展開したのである。スティーブは、反論をまったく用意していなかった。彼は、どうして今のような状況に丸め込まれてしまったのだろうと、考え続けていた。

スティーブは、バーバラが戻ってきた以上、去年の今頃のような寒々とした夫婦関係が再現することになるだろうと思っていた。しかし実際は、バーバラは、一緒にいる時はいつも、心優しい気遣いを見せ、友好的に振舞っていた。いま何をしているか知りたかったからと、職場のスティーブに電話をかけてきたり、食事の用意もすべて自分が担当し、しばしば、スティーブが好物としている料理を作ってくれた。

スティーブは、バーバラが同じ家に住んでいても、ある種、別々の存在である雰囲気を保ち続けようとしたが、それは1週間も持たなかった。どうしても、彼女の親しげな話し掛けや、人懐っこい笑みに応じてしまうのだった。バーバラは、スティーブが保とうとする境界線を尊重し、彼が居心地が悪そうになれば、直ちに身を引いた。彼女は、時々、意図的に、しかし注意深く、スティーブが張っている境界線がどこにあるのかを試し続け、彼が拒絶する反応を示した時は、笑顔で身を引いた。スティーブは、次第に、彼が張り巡らしていた障壁を引っ込めるに任せるようになった。障壁が崩れ始めていることに彼自身、気づいていたが、それを防ごうともしなかった。

スティーブは、依然として、いくつかの場面では、バーバラが、腕を伸ばした距離より内側に来ることは避け続けていた。そこから先には寄せ付けたくないとする地点があった。特に、たとえ、彼が幸いにしてstdに感染していなかったとしても、彼女とセックスをしたいという気持ちにはならなかった。スティーブは、その気持ちが変わるかどうかも、変わるとしていつになるかも、バーバラに伝えることはなかった。


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[2009/03/02] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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