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ポルノ・クイーンの誕生 第6章 (11) 


ジュエリーについて話しをしてもらい、その後、マリアとヘレンがテーブルを離れた後で、私は父に訊いてみた。

「お母さんが、こんな私でも構わないと思うかしら?」

「いいかい、お前のお母さんは、心からお前のことを愛していたんだよ。お父さんは、お母さんがどれだけお前のことを愛していたか知ってるから、大丈夫、お前が何をしようとしても、100%賛成して守ってくれたはずだと、お父さんは思っているよ。もっと言えば、男の子だったときよりも女の子として、もっと愛したことだろうと思ってるんだ」

「もう一つ訊いてもいい?」

「ああ」

「この前、レストランで私が立ちあがったとき、お父さんは、すぐに私のことを分かったと思うんだけど。顔の表情から、そう思ったの。でも、お父さんのテーブルの前に行ったら、お父さんは、私が誰だか分からないような顔をしていたわ。どうして、あの時、お父さんは、あんなに何か怖がっているような顔をしたのか、気になっていて」

父は笑い出した。「ああ、あの時は、幽霊でも見たのかと思ったんだよ。お前は、お母さんの顔を忘れてしまったのかい?」

正直、母の顔ははっきりと覚えていなかった。思い出そうとしても、いつも、曖昧なイメージしか頭に浮かんでこなかった。何かもやがかかったようなイメージだけだった。

そのことを父に言うと、父は財布から写真を取り出した。

「そうだろうと思ってね。その写真を見れば、お前がとてもお母さんに似ていることが分かると思うよ。レストランで、向こうから歩いてくるお前を見て、お母さんが歩いてきたと思ったんだよ」

写真を見て、すぐに、とてもよく似てることが分かった。同じ鼻の形、同じ目をしている。耳とあごは、少しだけ私の方が大きかったけれど、それを除くと、私と母はまるで姉妹のように見えた。

4時ごろになり、父はボルチモアに戻る飛行機に乗るため、もう行かなければならないと言った。父は、着替えをするため、マリアと一緒に、マリアの寝室に行った。ただの着替えをするのに、30分以上もかかることはないのは分かっていたけど、もちろん、そのことには触れずに置いた。

玄関先で、私は父にお別れのキスをし、これからも連絡を取り合っていこうと約束しあった。父と私が別れの挨拶を済ませるとすぐに、マリアが父の首に両腕を絡めて抱きつき、2人は熱のこもったディープキスをした。マリアは、父に、次にこちらに来る時は、必ず電話をし、デートにでかけるように約束させた。それから2年間、父はロサンジェルスに来るたびにマリアとデートをしている。

20歳の誕生日を迎えた10日後、私は豊胸手術を受けた。どれだけ痛みを味わうことになるのか、前もって知っていたり、誰かに教わっていたら、多分、手術は受けなかったと思う。

鎮痛剤と麻酔をかなり与えられていて、意識を失っていたので、手術中は何も感じなかった。手術室に入っていくところと、外科医を見たところまでは覚えていたけれど、その後は、あまり覚えていない。

目を覚ますと、胸の上に大きな重石を乗せられているような気がした。胸が、予定より5倍近く大きすぎるように思った。実際は、その大半は私を包んでいた包帯やガーゼだった。

当日、家に戻り、それから3日間は、何をすることも許されなかった。お医者さんは、すぐに仕事に戻っても構わないと言っていたけれども、トレーシーは、それを許さなかった。胸がいつも痛んでいたことは、ある意味では、嬉しいことだった。というのも、その痛みが、まるで誰に胸を強く揉まれたり、乳首をつねられていて、それがずっと続けられているような感覚だったから。

マリアとトレーシーから受けた世話には、決して、苦情を言えない。2人は交替で、私の身体をスポンジで洗ってくれたり、一緒にいて、映画を見るのに付き合ったり、おしゃべりをしてくれた。2人の心のこもったお世話と鎮痛剤のおかげで、私は何とか最悪の時期を乗り越えた。

次の月曜日、包帯を外す時が来た。そして私は初めて自分の乳房を見たのだった。固く、こんもりと高く盛り上がった胸だった。誰かに2つの丸いボールを皮膚の下に入れられたように見えた。お医者さんは、1ヶ月ほどで、新しい乳房の周りの皮膚が馴染んできて、ずっと自然な形に見えるようになると仰ってた。


[2009/03/06] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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