「マーサ!」と僕はかすれた声で言った。「君は分かっていないんだ・・・」と途中まで言いかけ、後は、彼女の手を取って、僕の股間に押し付けた。僕が勃起していることが感じ取れるようにと。
「何なの? あっ、私、どうしてこんなこと言ってるんだろう? まるでバカみたい」
「これは、僕が君に対して友情の他に感じていることの証しだよ」
マーサの手はズボンの上から僕のペニスを覆ったままだった。彼女は、依然として僕を見つめていたが、何か迷っているような表情を顔に浮かべている。
「しても良い? ・・・あなたの服を私に脱がさせてくれる?」
彼女の手が僕の股間を軽く揉んでいるのを感じた。バージンにせよ、そうでないにせよ、マーサのことにどんどん惹きつけられていくのを感じた。僕が即座に返事をせずにいると、マーサは僕のシャツのボタンを外し始めた。
「本当に、初めてなんだね?」 しばし沈黙した後、僕は問いかけた。
マーサはくすくす笑い出した。
「うふふ。中古品じゃないかって心配しているの?」
彼女はシャツのボタンを外し終え、今度はズボンのホックも外した。手を蛇のようにさせて、僕の下着の中に滑り込ませ、ペニスを握った。
「どういうふうにするか、すっかり熟知しているようだよ。それに、いわゆる乙女の恥じらいってのがどこに行ってしまったのかって思って・・・」
「ねえ、私はせっかくのチャンスを逃したくないと思っているのよ」と、彼女は、また、例の自己卑下したようなことを言った。
マーサは僕のペニスを握るだけで、手を動かしたりはしなかった。でも、そのため一層、あまりに速く射精してしまうのではないかと僕は心配になり始めた。
僕は体を起こし、シャツを脱ぎ捨て、それからズボンと下着を一緒に脱ぎ捨てた。再び横になると、彼女はまた僕のペニスを握った。
「ふふ・・・私のベッドに裸の男がいる」
「それを使って何をするつもりなんだい?」
そう訊くと、マーサは急にジーンズのチャックを降ろし、脚を伸ばして、脱いだ。さらにはパンティも脱ぐ。彼女も全裸になるとすぐに、僕は彼女の頭を両手で押さえ、もう一度キスをした。キスをしながら、片足を上げて彼女の体を包み、自分に引き寄せた。裸の肌が触れ合うのを感じながら、キスを続ける。
ようやく、マーサは顔を引いてキスを解いた。だがまだ僕の腕の中に抱かれている。マーサは僕の耳元に顔を寄せ、囁いた。
「今すぐ、あれをしたいわ」
できるだけ優しくしようと努めながら、彼女の上に覆いかぶさった時のマーサの顔に浮かんだ表情を、僕は今でも覚えている。恐怖と期待が入り混じった表情。
彼女にとって一番の苦痛の時を越えた後、彼女の中に入ったまま、しばらくじっと動かずに、抱きあって横たわった状態でいた。マーサを傷つけることが一番の心配だった。あまり何度も「大丈夫?」と僕が訊くものだから、最後には、マーサは、そのしつこさに嫌気がさしたようなことを言っていた。
しばらく経ち、突然、僕もマーサも時間のことが心配になり、部屋の明かりをつけた。マーサはローブを羽織り、僕は素早くシャワーを浴びた。玄関先で、彼女にキスをして、僕は彼女の家を去った。マーサはローブ姿のまま玄関先に立っていて、僕が行くのを見ていた。
フェイスは映画のことについては何も訊かなかった。僕は、自分が進んで嘘をついたことに我ながら驚いた。罪悪感を感じるべきなのに、どうして感じなかったのだろう? 頭の中は、フェイスがマーサに対して取る態度のことだけだった。