僕は、ハイヒールを履いたまま、なよなよとした足取りでゲイルのデスクへ行き、パソコンの画面を見た。画面には僕のオフィスが映っていて、ディスプレーの隣の小さな箱には、ドナが電話を耳に当てたまま大笑いしている画像が出ていた。ドナとゲイルの企みの全体像がはっきり分かるにつれ、僕もつられて笑い出していた。
自分のオフィスに戻り、電話を取った。
「さぞかし面白がってるんだろうね。はっ! 実に面白いよ! でもね、君はすべてを見たわけじゃないんだよ。最後に笑うのは僕の方かもしれないんだよ、ドナ女王様」
ドナとゲイルは、二人ともまた笑った。
「あなたのコンピュータを見てくれる?」
画面には、トイレのドアのところでゲイルがひざまずき、僕の男性自身に奉仕をしている動画が映っていた。黒いパンティの中から飛び出ている分身を見ると、男性自身というより、女性自身と言った方がふさわしいかもしれない。僕は電話を置いて、ゲイルのオフィスに戻った。彼女のデスクには、僕のデスクにあったのに似たウェブ・カムがあってトイレの方向にレンズを向けていた。
「説明させてくれ」 と言いかけた。ドナはまた笑っていた。
「説明は必要ないわ。あなたは、私とゲイルが書いたシナリオ通りに反応したのよ。最高の女装役者を演じてくれたわ。あなたが家に戻ったら、ビデオを全部見せてあげる。・・・それはそうと、男性のお客様にデートに誘われる前に、かつらとヒールを外して、口紅も落としたほうが良さそうよ。でも、お願い。家に戻って来たら、もう一度、かつらを被って、ヒールを履いて欲しいの。それにトイレの戸棚にしまってあるお化粧道具も使って欲しいの。あなたのクローゼットには、ちょっとしたものがあるのよ。あれ、私、とっても気に入ってるのよ。じゃあ、バイバイ。それにゲイルも、バイバイ。ありがとう」
「どういたしまして」 と向こうの部屋にいるゲイルが言い、電話を切った。