私がそれを言うとただちに、彼女は車を近く家の玄関前の通路に入れた。あまりにも突然のことで、私は驚いて呆気に取られていた。まだ私たちの家には遠い。彼女はちらっと私を見たが、私には彼女の表情が見えなかった。
「じゃあ、あなた、スパンキングに興味があるわけね?」
そう訊かれても私はどう答えてよいか分からず、じっとしているままだった。自分でも自分が何を期待しているか分からなかったが、ベスが、その類のことをすることは期待していなかったのは確かだ。彼女は車をバックさせ、玄関前の通路から出し、今まで来た道を戻り始めた。
もはや帰宅の道ではなった。
「どこに行くの?」
思い切って訊いてみた。彼女は返事をしなかった。ただ運転を続けている。
とうとう彼女はある家の前の通路に車を入れた。私にはそこがどこか分からなかった。その家には明かりがついていた。ベスは車から降り、私についてくるように言った。私は、依然として何が起きてるのか分からず、ただ彼女の後についていくだけだった。多少、呆然とした意識のままで。
彼女は玄関のベルを鳴らした。ドアが開き、女性が顔を出した・・・多分、40歳かそこら辺りだと思う。その女性は、「またか」とでも言いたげな顔をした。私たちを一瞥し、後ろを向いて、「ジェフリー!」 と名前を呼んだ。その後、彼女は玄関先に立ったまま。やがて男の人が出てきた。
彼は、ブロンドがかったもじゃもじゃの髪をしていて、若そうな人に見えた・・・大学1年生か2年生くらいに思ったと思う。とても顔立ちが良い。かなりラフな服装をしていた。そして私たちを見う。
「ああ、ハイ!」
ベスが家の中に入り、私もその後に続いた。先の女性はリビングに戻って行った。私たちは廊下を進んでいたが、リビングの前を通りかかったとき、私はちょっと中を覗いて見た。彼女は、高校生くらいの女の子と一緒にテレビを見ていた。
私たちはジェフリーの後に続いて廊下を進み、それから階段を降りて、地下室に入った。彼に導かれて広い地下室の中をさらに進んでいく。すると奥にドアがあって、その先に小さな部屋があった。ソファのように作られたベッドがあった・・・その部屋は小さな寝室のように見えた。誰かがそこで暮らすため、あるいは多分、客用の部屋として使われているのではないかと思った。ジェフリーは振り返って、椅子の端に腰を降ろし、私を見上げた。