僕たちは、少なくとも一時間は抱きあったまま横になっていた。うとうととしながら体の回復を待つ。ディアドラは目をつむったまま僕の肩に顔を埋めていた。
ようやく彼女は体を回転させて僕から離れると、枕に顔を埋め、泣き始めた。最初は静かにすすり泣いていたが、次第に泣き声に力が入ってきて、突然、苦しげに悲痛な泣き声をあげ始めた。全身を震わせながら、何度も大きくすすり上げる。
僕はディアドラの肩に手を掛けたが、彼女は拒絶するように体を震わし、僕の手を振り払った。
「ディ・ディ? どうしたの? 大丈夫?」
ディアドラは、すすり上げつつ、喉を絞るような声で答えを返してくれた。
「本当に、ごめんなさい・・・私ってひどい人間だわ! 自分でも分かってるの! こんな私を我慢できるわけがないわよね? 私を嫌ってるに違いないわ。でも、お願い、嫌いにならないで、アンドリュー。本当に悪いと思ってるの! あんなこと言うつもりはなかったのに!」
「言ったって、何を?」 僕は意地悪をして聞き返した。
「何のことか、すっかり知ってるくせに! どうして、私の言ってることが分からない振りなんかするの?」
「ごめんなさい。でも、全然、問題ないことだから。僕は君を愛している。そして、僕は、無理やり君にそれを言わせたんだ。その言葉に責任なんか持たなくてもいいんだよ。その気持ちがないなら、僕を愛する必要なんかないんだから」
だが、ディアドラは、ますます啜り泣きの度合いを増していった。ほとんど言葉を出せないようだったが、搾り出すようにして返事をする。
「でも、私はあなたを愛しているのよ! ほんとに。どうしてこんな気持ちになるか、抑えきれないの。ごめんなさい。あんなこと言うべきじゃなかったわ。私、とんでもない人間なのね」
「ああ、そうだね、ディ・ディ。君は、僕が知ってる中で、一番とんでもない人だよ」
ディアドラは、ハッと息を呑み、今度は声を出して泣き始めた。苦悩に満ちた顔をしている。
「そんな私でも、まだ愛せるの?」
「・・・この世が終わるまで」
まさに言うべき言葉を言ったのかも知れない。ディアドラは、とたんに僕にしがみつき、両腕で僕の首を抱きしめ、顔を肩に埋めた。まだ、声を上げて泣いている。
男は犬だ。これは理論ではなく、その道の人々の間で認められているドグマだ。この哀れな女の子は、目を涙で泣き腫らし、僕に心を注いでくれている。明らかに、彼女は何か分からないが、現実に、あるいは、想像で僕を傷つけたと感じ、心を痛めている。
確かに、僕は、彼女の感傷的な姿を見て心の琴線に触れ、共感を感じた。確かに、彼女を胸に抱き寄せ、頭を優しく撫で、慰めてあげたいと感じた。だが、それ以上に、僕は彼女にセックスしたいと感じていた。この貪欲さ、まるで自分がブタになったような気分だった。でも、他に何ができるというのだ? 前に話した、僕の「男はペニスで思考する」の定理を思い出して欲しい。
この世の中、魅力にあふれた全裸の女性が泣きながら、ありふれたやり方で慰めを請い求める姿ほどセクシーなものは存在しないのではないかと思う。しかも、そのような慰めができる男は、この場に僕しかいないのだ。