「どうやら、お前は、彼を取り戻したようだね」 リディアは嬉しそうに語った。「簡単じゃなかったし、あの男もずいぶん抵抗したようだが、今は、お前は、あの男の女に戻れたし、あの男の方もお前のものに戻ったようだ」
バーバラは、憂いに沈んだ表情で祖母の顔を見た。彼女は、それほど確信は持っていなかった。確かに、事態は良い方向に進んでいた。だが、沈静化させなければならない問題がまだたくさん残っていた。沈静化というより、解決すべきと言うべきか。
「何が気がかりなんだい?」 リディアは、孫娘の顔を見ながら尋ねた。
バーバラは、しばらく下唇を噛んでいた。それから、ようやく答え始めた。
「かなり前のカウンセリングでスティーブが言ったことなの・・・私とのセックスで良かったと感じたのは、結婚して2ヶ月ほどまでだったとか、そんなことを・・・」 バーバラは悲しそうな目で祖母を見た。「ノニー? 彼、どうしてあんなことを言ったのかしら?」
「まあ、ただの当てずっぽうだけど、多分、感じてた通りのことを言ったんじゃないのかい?」
「ノニー! ひどいわ! 優しいこと言ってくれないの?」 バーバラは腹を立てた。
リディアはくすくす笑った。
「いいかい? セックスというのは優しいばかりじゃないんだよ・・・激しく、汗まみれで下品になることもあるものさ・・・淫らになりきると言うか・・・」
「わ、私は・・・」
バーバラは、どうしてよいか分からないような面持ちで祖母を見た。確かに、以前、ノニーは、誰についてのどんな話題でも話しあってもかまわないことにしようと言っていた。だが、この話題は暴走しそうな気がした。・・・しかも急速に手に負えなくなりそうと。バーバラはどう返事してよいか分からなかった。
「久しぶりにスティーブと愛し合ったわけだけど、どんな感じだったんだい?」
バーバラに同情しながらリディアは尋ねた。リディアは、バーバラが、しばらく前から悩んでいるこの話題にどう接近してよいか分からないでいると察知した。
「素敵だったわ」 バーバラは即座に答えた。「彼はとても優しくて、愛がこもっていて、気遣ってくれたわ・・・二人で達したとき、私、これまでの人生でこんなに素敵に感じたことなかったと思ったわ」
「ということは、スティーブは、お前を愛しながら、たくさんキスしたわけだね?」
バーバラは頷いた。
「お前の胸を穏やかに手のひらで包んで、乳首に優しくキスしたと?」
バーバラの首筋は、ほんのりとピンク色に染まり始めた。こういう話題は、母親とも話し合ったことはなかったし、ましてや祖母と話し合うなど夢にも思っていなかった。
「えっ・・・ええ・・・」
「腕を擦ってくれて・・・それから太ももも・・・いたるところ、優しく触れてくれた・・・それからお腹をキスしながら下って行って、そして・・・」
「ええ、そう・・・彼、全部してくれたわ」
バーバラはリディアの言葉をさえぎるように早口で答えた。リディアが話せば話すほど、首筋の紅潮はますます色を増し、ますます簡単には消えなそうな兆候を示すようになった。
リディアは、そんなバーバラを咎めることなく、微笑みかけた。
「それで彼が・・・彼がお前の中にペニスを入れた後は、ゆっくりと優しくしたんだろう?・・・お前が彼を受容するのを確かめながら?」
バーバラは、もう、頷くことしかできなかった。
「それに電気も消していた。お前たちすでにベッドに入っていたのだから。そうだろう?」
バーバラは再びこくりと頷いた。
「お前とスティーブが愛し合うときは、ほとんどいつもそうしていた。そうだね?」
バーバラは、今度は、かなり長い間、祖母の顔を見つめ、それからゆっくりと頷いた。ノニーは、何か、大成功を収めたかのような満足顔をしていた。バーバラは、ノニーが何かたくらんでいるのではないかと思い始めた。
リディアは立ち上がり、窓際に行き、ちょっと外を眺めた。バーバラは、リディアは、今まで言ったことすべてを・・・あまりにプライベートすぎて誰とも話し合うことなどできないと彼女には思える、そんなすべてを考えているところなのだろうと思った。
急にリディアは振り向いて、バーバラを見た。
「それで・・・スティーブがお前をキッチンテーブルにうつぶせにさせて、後ろから滅茶苦茶に犯した最後の時は、いつ頃だったんだい?」
唐突な質問に、一瞬、バーバラはきょとんとした。それから、ハッと息を呑んだ。
「ノニー!!」
リディアは嬉しそうにクククと笑った。若い世代の者を唐突に驚かせることも、歳を取ることの楽しさの一つと言える。
「さあ、いつだったんだい?」 リディアは引き下がろうとしなかった。
「ずっと前だわ」 バーバラは弱い声で答えた。
「新婚時代から?」
「・・・だいたい、そう」
バーバラの声は、囁き声ほどに小さくなっていた。彼女は必死に堪えようとしていたものの、首筋に広がっていた赤みは上方の顔面へと広がっていた。
リディアは声を上げて笑い出した。