ディアドラは、あっあっと声を上げながら、腰をせり上げ始めた。ロマンティックなひと時が、次第に、性的な欲求の解放の行為へと変わっていく。僕は、彼女を抱きかかえ、そのまま、仰向けになった。僕のペニスは彼女の中に包まれたまま。
ディアドラは、頭を僕の胸板につけて、僕にしがみついていたが、その後、体を起こし、僕を見下ろした。もう、そこには、さっきまで泣いていた彼女はいなかった。あの笑みが戻っていた。彼女の瞳に炎をともす、あの笑み。それが僕の上、僕を照らす明かりのように輝いていた。
「ようやく、私に仕切らせてくれようとしているのね? あなた、男尊女卑主義者なの?」
僕は頭を左右に振った。「僕は場慣れしていないかもしれないけど、バカではないよ。君は、僕の人生に登場してきた瞬間からずっと、僕を仕切りっぱなしだよ」
彼女はさらに明るい笑顔になった。ああ、何と! 彼女にはえくぼがあったのか!
ディアドラは、体を前に倒し、いたずら気味に僕にキスをした。彼女の乳房が、軽く前後に動いて、僕の胸を擦った。
彼女はその姿勢を保ったまま動かずにいた。二人の恥骨がぴったりとくっついたままになっていた。突然、ペニスがマッサージをされているのを感じた。彼女のあそこがしているのだ。きゅっきゅっと絞られたり、擦られたり、いじられたりするのを感じる。
「ああ、すごいよ、ディ・ディ!」
「うふふ・・・分かる? 私も才能がないわけじゃないのよ」
ディアドラは僕に覆いかぶさり、口を開きあったねっとりとしたキスをしてくれた。頭がボーっとするような情熱的なキス。それから、彼女は体を起こし、動き始めた。
「じっとしててね、アンドリュー。私にさせて欲しいの」
彼女の腰は、臼で粉をひくような動きを続けていた。時折、前のめりになって、僕のペニスが何センチか彼女から出るようにさせ、その後、再び体を戻し、同じ分だけ、元の鞘に取り込む動きを混ぜた。
最初は、ゆったりとした動きだった。そのうち、ディアドラも気持ちよくなってきたのだろう。目はずっと僕の目を見つめたままだったが、体は一定のリズムで動き続けていた。そのゆったりとした動きに、次第に、速度が加わっていった。腰を戻す動きに強さが混じり始めた。やがて、腰を打ち降ろす動きに変わる。そして、それは、全力を使って僕の上でバウンドする動きに変わっていった。力強く腰を打ちつけるたびに、低いうなり声を上げていた。
ディアドラは、完全に、役割の交替を成し遂げたのだと悟った。というのも、僕ができるのはただ仰向けになって、彼女になされるがままになっていて、快感に頭が空っぽになる状態にさせられていたから。もはや、僕は限界に近づいていた。
激しく上下に動いては、あそこの筋肉を使ってぎゅうぎゅう締め付け、それを繰り返すディアドラ。限界に達した僕は、集められる限りの力を振り絞って、下から彼女を突き上げた。それと同時に、彼女の中に僕の情熱を爆発させた。
その突き上げこそ、まさに彼女が求めていたものだったようだ。ディアドラは、僕の突き上げを受けて、ぐっと背中を反らし、容赦ない強さで僕にあそこを押し付けた。そして、それと同時に、頂点に達したことを告げる叫び声をあげたのだった。
その後、二人は、愛し合った余韻に包まれながら、かなり長い時間、静かに横たわっていた。ディアドラは、まだ僕の上に乗ったまま、頭を僕の胸に乗せていた。この姿勢はとても気持ちいい。
そろそろ、ディアドラに、何が悩みなのか訊いてもよい頃だと思った。あのような苦悩をもたらしているものが何であれ、どうしても僕はそれに対処しなければならないと思っていた。彼女の苦悩を和らげられないなんて、恋人として失格じゃないか。
彼女を優しく抱きながら、問いかけた。
「ディ・ディ? 悩みは何なの? 何か問題があるなら、僕にできることがあるかもしれないから」
彼女は、ただ頭を横に振るだけだった。
「ねえ、ディアドラ? 困ったことがあるんじゃないのか? 教えて欲しい。体の調子とか?」
彼女は、悲しそうに微笑み、再び頭を振った。
「子供が生めない。そういうこと?」
ディアドラは、突然、体を起こした。まるで雷に撃たれたかのように。
「子供って! 子供のことについて、全然、一言も触れなかったくせに!」
僕は、自分が危なっかしいところに入ってしまったと感じた。彼女は怒っているようだ。赤ちゃんのことについて何も言ったことがなかったことが良いことなのか、悪いことなのか、分からなかった。ともかく、再びディアドラが泣くような事態は避けたかった。だから、できるだけ、平然さを保とうとした。
優しく落ち着いた声になるよう注意しながら尋ねた。
「でも、ディアドラ、君が関係ないことを話題にしなかったのと同じだよ。どうして、僕が子供のことについて触れられただろう?」
彼女は、ちょっとの間、どこか他の場所にいるような雰囲気をしていた。彼女の目に涙が溢れているのが見えた。
ディアドラは、すっくと立ち上がり、僕に片手を差し伸べた。
「今日も、素敵な夜をありがとう、アンドリュー。もう、おやすみなさいの時間ね」
こんなに素晴らしい展開になった夜だったというのに、どうして、こんなおかしなことになってしまったのだ? どうしても彼女に訊かずにいられなかった。
「ディアドラ? 怒っているの? 僕は何か悪いことを言った?」
彼女は微笑んだ。それから、両腕を僕に回して抱きつき、顔を僕の胸に押し付けた。
「いいえ、違うわ、アンドリュー。あなたは私にいつも正しいことを言っている。このことについては、明日の夜に話しましょう。多分、明日。こんなふうに、打ち明けない私のことを怒ってるでしょうね。でも、これは私に決められることじゃないの。約束するわ。できるだけ早く、あなたが知りたいことすべてを話してあげられるようになるから」
どういうことだろう? 今夜は、何も答えを得られそうにないことは確かだった。僕にできることは、彼女の部屋から出て、家に帰り、最良の結果がくることを願うことだけだった。