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無垢の人質 第5章 (8) 

レオンの動物的な低い唸り声と、イサベラの悩ましいよがり声。それが、交互に部屋に響いた。レオンの強い突きにベッドがきしみ音を上げる。

前に回したレオンの手の指がイサベラの突起を探り当てると、とたんに、イサベラはひときわ甲高い声を上げた。絶頂を告げる声だった。

巨大な波となった強烈な快感に全身を洗われ、イサベラは、絶頂の悲鳴を上げながら、激しく背を反らせた。小さな体であるにもかかわらず、巨体のレオンを押し返さんばかりにバネとなって弾ける。陸に上がった魚のように体全体で跳ね暴れた。その間も、彼女の狭い肉筒は、レオンの分身を搾り続け、なおも貪欲に奥へ引き込もうとする動きをしていた。

「くっ!」

イサベラのオーガズムの強烈さにレオンは思わず声を上げた。頭を後ろに倒し、最後の力を振り絞ってイサベラの奥深くへと突き刺した。のたうつイサベラの腰を両手で押さえ、根元まで完全に突き刺す。激しい射精だった。何度も痙攣が起き、そのたびに強烈な噴射がイサベラの子宮の壁に弾け飛んだ。

どのくらい二人が静止していたか分からない。突然、レオンはイサベラから抜け出た。彼女はまだ苦しそうな息遣いを続け、奪われたままの格好でベッドに突っ伏していた。

レオンも荒い呼吸のまま、何か罵る言葉を呟きながら、衣類を集めていた。イサベラは、小部屋のドアがバタンと音を立てて閉まるのを聞いた。

イサベラは、疲れた体を引きずるようにして半転させ、仰向けになった。それまで圧迫されていた肺が楽になり、ようやく穏やかな呼吸に戻る。体全体が疲れきって、動けなかった。だらしなく全裸のまま横たわる。

片手を顔に当て、乾いた涙を拭った。徐々に嫌悪感が湧き上がってくるのを感じる。レオンに対する恨み、彼がしたことに対する恨みが湧き上がってくる。怒りや憎しみを抱いていてもなお、私の身体は彼の身体を求めてしまう。しかも恐怖すら感じるほど強烈に求めてしまう。そのことを自分に教えたレオンをイサベラは憎んだ。

* * *

レオンは目を覚ました。頭がずきずきし、目がちかちかしていた。口の中が、古い皮のようにざらざらしていた。片腕で目の上を覆いながら、苦しそうなうめき声を上げた。世界が傾いてしまったように感じた。元通りになるのを待ちながら横たわり続ける。

だが、頭痛が治まるのを待って長いこと横たわっているわけにはいかなかった。突然、怒ったマリイが嵐のような勢いで部屋に入ってきたからだ。レオンはマリイがくるのを予期していなかった。

「よくもまあ!!」 マリイは甲高い声で叫んだ。レオンは頭痛にしかめ面をした。

「よくもまあ! 本当に、腐った、心根の汚い男ね! あなたの父親とまったく同じ!」

「ああ、父と・・・」 レオンは体を起こしながら取り澄まして頷いた。片腕で上半身を支えて起きたが、そんな小さな動きも、頭痛に響き、してしまってから後悔した。

「・・・父であり、お前の亡き夫だがな」

「ええ、そうよ、私の夫! 冷酷で、見てみぬふりをし続け、私に一銭も残さなかった、あの男!」

「死んだ者のことを悪く言うのはやめることだよ、マリイ。・・・特にわしの父のことは悪く言うものじゃない。父はお前と結婚したのは間違いだったとすぐに気づいたんだ。だが、それでも、他の者たちと違って、お前の欲深さや不義の行いには目をつむっていたのだよ。父は、お前に女王のような贅沢な暮らしをさせてあげたのだ。それを感謝すべきだろう。その間、お前は身分の低い召使どもと遊び呆けていたのだから、なおさら」

「あの男は年寄りで、ベッドで私を満足させることができなかったの。私は若くて美しかった。欲求を持つのも当然でしょう。それは、みんな分かっていることだわ」

レオンは口をつぐんだ。両脚をベッドの脇へ降ろし、それからゆっくりとためらいがちに立ち上がった。彼は、掛け布が滑り落ち、裸の体が露出しても気にしなかった。

「ひどいわ、レオン! 召使たちを私の部屋によこして、即刻、荷物をまとめて出て行けなんて命令を伝えさせるなんて! どうしてそんなことができるの? 私、あなたのこと愛しているのよ。私たちならうまくやれると思うの。あなたが私に機会をくれたら、きっと分かってもらえる。二人で過ごしたあの日の午後のこと、あの時のことは、私の心にいつまでも焼き付いているわ!」

「マリイ、我ら二人では、可能性がないのだよ」

レオンは、ぼんやりした目でマリイを見ながら、断定的に言った。


[2009/08/07] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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