金曜日の職場の状態は木曜日とほぼ同じだった。今は、ディアドラと二人で、様々な情報を掻き分けて進んでいるところだった。向かっている方向ははっきりしていたし、すべてが収まるべきところに収まりつつあった。ディアドラのことを思うと、これは良いことだと嬉しくなる。というのも、基本的に、彼女の行う仕事によって、彼女の業績が評価されることになるのが自明だから。この仕事がうまくいけば彼女の評価も上がるだろう。実際、ディアドラは立派に仕事をしていた。本当に。それに彼女は自分の仕事を愛しているようだった。
この日、僕もディアドラに負けず劣らず仕事に集中した。だが、前夜に話し合ったことがどうしても頭に引っかかっていたのも確かだ。特に、子供のことについての部分。
あれは、いったいどういうふうに解釈すべきなのだろう? 確かに、僕たちは避妊具を使わずにセックスをしていた。でも、ディアドラなのだから、性病は問題外だ。それに、僕自身も病気の心配がないのも確か。それに、水曜日に、彼女は妊娠の心配はないと請合っていた。だからこそ僕はコンドームをつけることは考えなかったのだ。
彼女はピルを飲んでいるのだろうか? 最近セックスをしていないと言う女性がピルを飲んでいる? これも考えにくい。
多分、もう一つの想像が当たりなのだろう。不妊症なのかもしれない。そのことについて僕自身がどう感じているか? それは自分でもよく分からない。確かに、子供は欲しい。でも、そういうことなら養子をもらうことだってできる。なんだかんだ言って、僕はZPG(zero population growth:人口ゼロ成長)支持派の人間だ。
憶測を働かせないこと。その方が良いということだ。ディアドラの可愛い喉にどんな骨が刺さっているのか、それを知ろうと頑張っても、結局、自分でトラブルを引き寄せることにしかならないと考えた。ディアドラは、話すべき時が来たら話してくれるだろう。その時になって、僕も対処するか、対処しないかを決めればよい。
もっと言えば、あまり心配していなかったというのが実情だった。僕が気にしていたのは、彼女と一緒にいられるかどうかが大半だった。そんな僕の状態が何かで変わるとも思えなかった。
日中ずっと、ディアドラは、愛らしく、優しい感じの性格を維持し続けていた。確かに、いつもの通り彼女は仕事に完全集中していたが、そのビジネス上の言葉使いや振る舞いは、すべて、あのリラックスして陽気な物腰のフィルターを通して出てくるので、優しく明るい雰囲気が漂っていた。僕はそういう彼女のそばで仕事をするのが大好きだ。
5時20分ごろ、仕事を終える準備をしている時、僕は、一日中、彼女に訊きたいと思っていたことを訊いた。
「ディアドラ、今夜、会えるかな?」 切羽詰った気持ちが表に出てたかも知れない。
ディアドラは僕の手を握った。
「もちろんよ、アンドリュー。解決しなければいけないことだもの。ぜひ、今夜、頑張ってみたいと思っていたの。あなたが、それで良ければの話しだけど。今夜7時に私の部屋に来てくれる? 一緒にディナーを食べて、そして話し合いましょう。あなたを驚かすことがあると思うけど」
「いや、もう、結構だよ。すでに、一生分まかなえるほどサプライズはもらっているから。でも、ともかく7時に迎えにいくよ」
僕は家に戻って着替えをし、とんぼ返りで街に戻った。よくあることだと思うが、帰るときも、戻るときも、信号はすべて青だった。制限速度をきちっと守って走り、ゆっくり時間を掛けて来たけれど、着いたのは20分も前だった。
時間が来るまでじっと待つ代わりに、僕はまっすぐ彼女の部屋に向かった。じっと待っているなら、その同じ時間、彼女と一緒にいたかったから。
彼女の部屋をノックしたのは6時45分だった。気分は上々で、この2晩のような、興奮で気が狂うような切羽詰った気持ちはまったくなかった。多分、僕の体が、ディアドラはもうしばらくはそばにいてくれるという信号をようやく受信したためだろうと考えている。だから、彼女に会うたび、彼女を襲わなくても良いと認識したのだろうと。まあ、これも、僕が考察している理論にすぎないけれど。
ドアが開くのを待ちながらホテルの廊下に立っている間、僕は落ち着き、冷静沈着、すがすがしい気分でいた。そして、ドアが少し開いた。彼女の姿が見えた。半開きになったドアの向こう、シルクのローブを着て立っている彼女の姿。
突然、僕のホルモンが狂いだした。血液が洪水のように一気にペニスに流れ込み、みるみる勃起した。激しく切羽詰った感情に囚われ、頭がボーっとし、熱い情熱が溢れ、興奮した。
部屋の中に進み、ドアを後ろ手に閉め、ディアドラの応答も聞かず両腕で抱きしめた。
彼女は、驚いたような、困惑顔になり、その後、怖がっている顔に変わった。僕は彼女の唇に唇を重ねた。
情熱に狂ったキスをしていた。でも両手は仕事を続け、彼女のローブの紐を解いていた。そしてあっという間に脱がした。裸になった彼女を抱き上げ、ベッドに運び、横たわらせた。
一歩ほど後ずさりし、自分の服を脱ぎ始めた。その間、目はずっと彼女を見つめていた。ディアドラは僕が脱ぐのを見ていた。小さくゆっくりと頭を動かして見ている。左右にゆっくりと振っているようだった。「ダメ・・・」とそう囁くのが聞こえた。
確かにディアドラは頭の中では「ダメ」と囁いていたかもしれない。でも、体は、「やって」と叫んでいた。乳首は最大にまで硬く大きくなっていたし、すでに脚の間に湿ってきているのが見て取れた。