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Fashion ファッション (15) 

ようやく僕は動いた。

マーサの後ろに這って行き、ゼリーで指に潤滑を与えた。それから、指を1本、彼女のお尻の割れ目にあてがい、ゆっくりと入れ始めた。

その間、誰も、音一つ立てなかった。

マーサはただ横になっているだけ。前に組んだ両腕に頭を乗せ、顔を横に向けている。目は閉じたままだった。

指を1本入れた後、少しだけ動かし、2本目に取り掛かった。

ジョイスは、その場に彫像のように立って見ていた。服を着て、いつでも出て行けるようになっているが、立ち去ろうとはしていなかった。

僕は2本目の指も差し込んだ。そこの入り口を広げていく。マーサが少しだけ僕の指に対して押し返す動きを示した。多分、大丈夫なのだろう。

僕は、指を抜き、彼女に覆いかぶさるような体勢になった。ペニスを握り、狙いを定める。

依然として、みんな黙ったままだった。

身体を押し付けた。できるだけ優しく入れていこうとした。身体を押し付け、奥へ奥へと進んでいく。

ちらりとジョイスの方を見た。・・・まだ服を着たまま。だが、右手を左の胸に当てて動かしていた。

僕はマーサに体重を掛けた。・・・とうとう、根元まで入った。

それからゆっくりと少しずつ動き始めた。マーサが、小さく、「ああ!」と言うのが聞こえた。だが、その一言だけで、後は、また何も言わなくなった。

僕は動き続けた。徐々にテンポを上げていく。マーサは、まったく声を上げなかった。だが、僕の動きに合わせてお尻を突き上げていたのは事実だった。

僕たちの身体の動きに合わせて、肌がぶつかり合う音が響いていた。その他には、ベッドがきしむ音しか聞こえなかった。

そして、僕は達した。マーサの中に射精し、力尽き、彼女の上に覆いかぶさった。マーサは僕の下でうつぶせになっていた。依然として、黙ったままだった。ドアが開く音が聞こえ、ジョイスが出て行ったのを知った。

僕は身体を反転させてマーサから降り、隣に仰向けになった。そして片腕を彼女に回し、引き寄せた。横寝になりマーサを後ろから抱いた。2本の重なり合ったスプーンのような形だった。

「想像してたのとは違ったんじゃない? きっとそうね」 マーサはそう言って、くすくす笑った。

「ああ、多分。・・・彼女、また一緒にする気分になると思う?」

それを聞いてマーサは笑い出した。「それを心配するのは私の仕事よ」

「もう変なことには誘わないって約束するのかな?」

マーサは、また、くすくす笑った。

その日の後、しばらくの間、僕はジョイスの姿を見なかった。だが、マーサによると、彼女はジョイスと話す機会を持ち、二人の仲は大丈夫だとのことだった。

ともかく、あの夜のアナル・セックスは、マーサと僕との間で行ったうちでも、最も興奮した行為だったのは確かだった。もっとも、マーサはまだまだ考えていることがあるらしく、僕に、もっとその手の雑誌を買ってくれと求めるのだった。

ある金曜の夜のことだった。その日もマーサのところに寄り、それから家に帰った。すると、その夜はフェイスがすでに帰っていたのである。リビングで独り座っていた。

フェイスは妹と一緒に外出していたはずで、少なくとも、もう1時間は帰ってこない予定だった。

その夜、フェイスは、僕が遅くなったことや、彼女が早く帰った理由について何もしゃべらなかった。

だが、翌朝になってフェイスは僕に訊いてきた。

「それで? 昨日の夜はどこに行っていたの?」 

実に何気ない口調で訊いてきたので、僕は、フェイスが何も疑っていないと思った。

「ああ、ちょっとモールに行って、ぶらぶらしてきたんだ」

「何か買ったの?」

「いや」

フェイスは僕の方を見て、何か考えているような表情になった。

「え? 何?」 

そう訊くと、フェイスはにっこり微笑んだ。

「陰で何か進行中?」

「うわっ、何だよ、その質問?」

「うふふっ。ただの冗談よ! でも、どうしてそんなに後ろめたそうな顔をするの?」

僕はちょっとフェイスの顔を見つめた。そして、適切な返事を求めて、頭の中を高速で回転させた。フェイスは僕の顔をじっと見ていた。

突然、フェイスは立ち上がった。

「嘘つき!」

そう言って、部屋から駆け出していった。

僕はフェイスを追って寝室に入った。

「フェイス! 何を考えているんだ!」

彼女はベッドにうつぶせになっていた。僕の呼びかけに、頭を上げ、振り返った。

「誰なの?」

「フェイス! どこで、そんなことを?」

「私もバカじゃないのよ。いや、バカかもしれない。相手が誰なのか言ってよ!」

彼女の顔には決意を固めたような表情が浮かんでいた。

「フェイス・・・」

僕は弱々しい声を出した。フェイスは僕を見つめたままだった。射抜くような視線を向けている。

「言って!!」

僕は深呼吸をした。「・・・マーサだよ」

彼女は暗い声で笑い出した。

「ふざけないで!」

僕はフェイスが次にどうするのだろうと思いながら、ただ彼女の顔を見つめるだけだった。フェイスはじっと僕の目を見据えていた。

「そういうこと!!」

突然、彼女は叫んだ。そして、激怒を爆発させ、僕がマーサを利用したとか、もう彼女には会うなとかとまくし立てた。そして、最後には、僕に、家から出て、二度と帰って来ないでと叫んだ。

僕は、後先も考えず、家を出た。車に乗り、マーサのところに走った。マーサは、心配そうな顔で、玄関口に立つ僕を迎えた。

「フェイスにばれてしまった」 そう言ってから中に入った。

「まあ・・・」と言って立ち尽くすマーサの前を通り過ぎてリビングに入り、カウチに座った。すぐにマーサも僕のところに追いついた。

「何てこと・・・何てことに・・・」 彼女は弱い声で繰り返すだけだった。

「追い出されたんだ」彼女を見上げながら言った。

マーサは依然として恐怖に引きつった顔をしていた。


[2009/08/20] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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