ディ・ディが泣いている。これはいけない。私たち二人は、二人で一つなの。それが壊れてしまったに違いない。
「どうしたの、ディ・ディ?」
「ドニー、ごめんなさい。どうしても、我慢できなかったの。彼に拷問に掛けられて、無理やり言わされてしまったの」
「拷問? 彼、拷問に掛けたの? 彼って何者? 何か病気の人なの? 何を言わされたの?」
でも、今度はディ・ディの方が腹を立て始めた。
「アンドリューのことを病気だなんて、よくも言えるわね! 彼のことを二度とそんな風に言わないで!」
「ディ・ディ、落ち着いてよ! ディ・ディこそ、たった今、彼に拷問されたって言ったのよ。他にどう考えれば良いか分からないわ」
「理解できないかも。彼、舌で私を拷問したの」
私は何のことか、分からなかった。「舌で拷問? いったい、何のこと?」
ディ・ディは私がしらばっくれていると思ったに違いない。
「舌で私に拷問を掛けたのよ! 分からないの? あそこ! 私にアレをしたの。そして、私が言うまで、やめようとしなかったのよ!」
それを聞いた最初の反応はというと、
「そもそも、どうしてやめて欲しかったのよ?」
「もう、あなたって本当におバカなんだから! 私にいかせてくれなかったのよ。エッチな気持ちで気が狂いそうにさせて、そのままずっと続けられたの。いつまでも、いかせてくれなかったの。もう、耐えられなくなってしまって。彼が求めることをどんなことでもしていたと思うわ」
私は口の中がカラカラになっていた。それも当然だと思った。だって、身体の中の液体が、全部、脚の間へと集まっていたように感じていたから。どうしても次の質問をしなければならない。
「それで、彼、何を求めたの?」
「私が彼のことをどう思っているか、言わせたがったわ。もちろん、私は黙っていようとした。実際、言わなかったのよ。少なくとも、何分かは我慢していたわ。でも、その何分かが永遠のようだったのよ。ダメな女だったら、あっという間に白状させられていたはず。賭けてもいいけど、あなただったら一瞬にして口に出していたはずよ」
アンドリュー・アドキンズに舌を使って拷問を受けたとして、自分がどのくらい白状せずにいられるか。この問題を議論する心構えができていなかったのは事実だった。電話を切ったら、早速、この問題について考えてみなければと思った。
「で、彼に何て言ったの?」
ディ・ディは、ようやく諦めて、自分のヘマを認める段階にきてくれたようだ。
「愛しているって言ったの。ごめんなさい。どうしても堪えることができなくって。拷問されたから・・・」
「でも、愛していないって言うこともできたはずじゃない? そのことは考えなかったの?」
私は少しイラついていた。ディ・ディが言ってることは本末転倒じゃないの。
「でも、彼に愛していないって言えなかったのよ。そういうことについては、どうしても嘘は言えなかったの。私、心から彼のことを愛しているの。そういうことで嘘をついて彼を傷つけるなんてできなかったわ。ドニー、是非、明日こっちに来て、お願い。来るべきよ。あなたの助けが必要なの」
私自身、たとえどんなことがあっても行くつもりでいた。それでも、ディ・ディに対しては、嫌々行くようなフリを続けたかった。
「分かったわ。明日の午後はオフにしてもらうよう頼むことにするわよ。ま、即席料理みたいなもので、簡単に認めてくれるとは思うけど。ともかく、行けたら行くわ。それでいいわね?」
「いいわ。私の部屋はハイアット・リージェンシーの713号室。フロントに行ってキーを求めれば、出してくれるはず」
「ディ・ディ? 私はもう35年間もあなたと姉妹をやっているのよ。その手口は承知しているわ」