レオンが、ズボンの腰紐を解くため、イサベラの手首を離した。イサベラは、その束の間の機会を使って、両足を引き寄せ、レオンの肩に両膝を当て、思い切り押し返した。
イサベラの力など、レオンのに比べたら取るに足らないものであり、普通なら、これも無駄なあがきになったはずだった。しかし、この時、レオンはイサベラの抵抗を予期していなかった。
身体が離れた隙に、イサベラは素早く身体を反転し、うつぶせになり、レオンが反応する前に両手を床について身体を起こそうとした。
レオンの腕が、彼女の太ももの間に、蛇のように伸びてきて、股間の柔らかい肉肌を掴んだ。
「いやっ!」
そこをつかまれたまま、レオンの方へと引き戻される。うつ伏せになった身体が引きずられ、床の敷物に身体が擦られる。
イサベラは、股間に手を伸ばし、そこを握るレオンの手にかぶせた。秘所をわしづかみにしている手を解こうと、彼の指を1本1本外そうとした。
レオンのもう一方の腕が伸びてきて、鋼鉄の万力のようにイサベラの腰をがっちりと掴んだ。
「あなたを恨みます」
レオンからもがき逃れようとしながらイサベラは叫んだ。しかし、レオンは、その悪あがきを嘲笑するだけだった。
「本気なのかな?」
イサベラを引き戻し、レオンは彼女の耳元にからかうように囁いた。
レオンの腰の上に乗せられたイサベラは、自分がもがき抵抗したせいで、望まぬ効果を彼に与えてしまったことを感じ、身を強張らせた。
「あなたは・・・あなたはけだものよ!」
そう呟きながら、レオンの太ももを思い切りつねった。だが、もちろん、レオンはたじろぐことすらなかった。
「ちっ! ちっ! 俺の可愛いイサベラは、そのおしとやかな外見の下に、激しい気性を隠しているようだ」
太い指が1本、湿り気を帯びた入り口を探り始めたのを感じ、イサベラはハッと息を呑んだ。
「レオン・・・」
指が中に滑り込んでくる。もう一方の手はイサベラの身体をしっかりレオンの下腹部へ押さえつけたまま、彼女の腹の柔肌を擦り、愛撫した。
「ううぅぅぅ・・・」
間もなく、レオンの指はイサベラの中に出たり入ったりを始めた。その動きは、指とそれを締め付ける彼女の女陰との間に甘美な摩擦を生み、イサベラは否応なくレオンの下腹部の上で身体をくねらせてしまうのだった。
「こんな時ですら、お前の身体は俺に犯して欲しいと願っているようだ」
レオンはそう言って、背後からイサベラのこめかみにキスをした。
「だが、俺は待つこともできるのだ」 と、レオンは指を引き抜いた。
「え?」
レオンは優しくイサベラの身体を床の敷物に降ろし、立ち上がった。イサベラは、激しく身体を動かしたためか、全身の肌が紅潮し薄く汗に覆われていた。困惑した顔でレオンを見上げ、溜息混じりに言った。
「ど、どうして?」
「俺は、お前が自分の意思で俺のもとに来るようになるまで、待つことにする」
イサベラは、息を呑んだ。そのレオンの声はかすれ、かつ、重々しい様子を帯び、その背後にある真剣な心情に満ちていた。
これまでイサベラはレオンの強引な性格は見知っていた。私の無垢の身体を、激しい性的欲望に無理やり従わせた時の、あの強引さ、激しい感情、そして支配欲。だが、彼のこういった側面は初めて見たのだった。火をつけられたままの欲望で理性が眩惑していたものの、イサベラは、レオンに対する印象がどこか変わったのを悟った。彼は、いまだにその眼が欲望で燃えているものの、どこか前より柔和に、獰猛さがより薄くなったように見える。