もちろん、私は最初から金曜の午後にクリーブランドに行くつもりでいた。姉をこんなにまでのぼせ上がらせた模範的男性とはいったいどんな人なのか、どうしても会う必要がある。
正直、私も彼にのぼせ上がっていた。立て続けに二晩も、私はディ・ディと電話した後、自分で身体の火照りを鎮めなければならなかった。話しからすると、とてもセクシーな人のようだ。アンドリュー・アドキンズという名前に、早く、その持ち主の顔をつけたい。それが待ちきれない気持ちになっていた。
クリーブランド行きの飛行機は問題なく取れた。5時にはホテルに入っていて、ディアドラを待ちながらテレビのニュースを見ていた。ディ・ディは、私を見て、とても興奮した。
「来てくれて、ほんとにありがとう。来れないんじゃないかってすごく心配したの。もう、これ以上、待てなかったわ、ドニー。どんどん自分ではどうしようもなくなってきてて」
私は冷静に振舞おうとしたけれど、ディ・ディの興奮は伝染性がある。
「どういう手はずになってるの? 今夜、その人と会うことになってるの?」
ディ・ディは頷いた。
「彼、7時にここに来るわ。その時までに準備を整えなくちゃ! 私は、ここで彼に事情を打ち明けるのが良いと思ってるの。少なくとも、私たちが双子だと言うのは打ち明けようと。それで、打ち解けあった雰囲気になると思うのね。その後、3人でディナーに行く予定。そうして、彼とあなたが、もっと良く分かり合えるようになるはず。それで、大丈夫だなって感触が得られたら、進行次第だけど、彼にもっと話しても良いと思うの。臨機応変に対処する必要があるわ」
私は懐疑的だった。
「今夜は、その人も含めて全員にとって、とても長くて、気まずい夜になりそうだわ。そういうことになったとして、そのアンドリューって人、どう思うだろうと考えているの?」
「正直、分からないわ、ドニー。彼はものすごく情熱的なの。私がこれまで出会ったどんな男についても全身に持っていた情熱の量よりも多い量を、彼の場合、小指1本に持っているのよ。それに、前にも言ったけど、彼、私のことを抑えきれないほど魅力的だと感じているの。だから、ひょっとすると、運がよければ、あなたのことも抑えきれないほど魅力的だと思うかもしれないわ。もし、そうなったら、私とあなたで、彼のことをこの世で一番幸せな男にしてあげるか、私たちからおあずけを喰らって完全に発狂状態にさせるかの、どちらかになるわね」
それは、両極端な選択肢だ。私の個人的な意見はと言うと、彼は私たち二人を見た途端、一気に逃げ出すだろうということだった。
時間が押し迫っていた。私は、半日、仕事をして、その後、飛行機に乗ってきたのでひどい状態だったので、私が先にバスルームを使うことにした。シャワーを浴び、ローブを羽織って、お化粧を始めた。
バスルームを出るとすぐに、ディ・ディが入り、シャワーを浴び始めた。彼女がシャワーを使い始めた途端、ドアをノックする音が聞こえた。
6時45分だった。彼はまだここに来てないはず。でも、彼なのかも。大変! 私はほとんど裸同然の格好でいる。少なくともお化粧をしなければ。もう、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。足から力が抜けていく感じ。それに、ドアの向こうにいる人が彼かもしれないと思っただけなのに、あそこが濡れ始めているのも感じた。どうしたらよい? 私は思い切ってドアを開けた。
彼だった! まあ、素敵な人! ディ・ディは、こんなに素敵な人だって言ってなかったわ。あの眼! 彼の瞳を見た。私の魂まで見ているような瞳。自分の身体の中、いろんな感情が沸騰してくる。溜息しか出ない。こんばんはと言うチャンスがなかった。自己紹介するチャンスもなかった。
彼が部屋に入ってきて、次の瞬間、何が起きたか分からなかった。彼の両腕の中にいた。キスされている! 彼の唇は魔法のよう。私はすっかり燃え上がっていた。それでも彼を止めようとした。
気がつくと、素っ裸のまま、初めて会った男の人に抱かれて立っていた。いつの間にかローブが脱げていた。
あの長くて力強い腕で軽々と抱え上げられ、ベッドへと運ばれた。ベッドに降ろされた。やめるように言おうとしたけど、言葉が唇から出るまでに、どこかで消えてしまう。頭を左右に振っていたのは分かる。必死で彼を止めようとしていたのは覚えている。