「俺は、パリのデザイナーの準備が整うまで、とりあえずの衣類を一揃い用意させ、お前が自由に着てよいようにする」
レオンが小部屋のドアへと歩き進むのを、イサベラは、大きな緑の瞳で追った。レオンはドアに近づくと、一瞬、振り返り、乱れた姿のまま床に座るイサベラを見た。
「この城は、お前が好きなように使ってよい」
レオンはドアをわずかに開けたまま、小部屋を出て行った。イサベラは、くねった石段を降りていくレオンの足音を聞いた。その足音は次第に小さくなって、やがて消えた。
イサベラは呆然と宙空を見つめ、床に座ったままでいた。レオンの行動は何だったのかを理解しようとしていた。
その時、両腕に一杯、可愛いペチコートやガウンを抱えてメイドが入ってきた。イサベラは、そのメイドがミナという名前で、彼女専用のメイドであることを知った。
メイドに服を着せられながら、イサベラは妙に居心地が悪い気持ちだった。
若いミナは、気ままにぺちゃくちゃとおしゃべりをしながら、イサベラの細身の身体にレースのシュミーズを着せ、小さな手で皺を伸ばし、ペチコートを履かせ、腰の周りにリボンを結びつけた。さらに、両腕をガウンに通させ、腕を上げさせて、ガウンの皺を裾まで伸ばした。その間、イサベラは沈黙したままだった。
幽閉されてから、ずっと全裸のままにさせられていたイサベラである。衣類を身につけたのは、もうずっと前のことのように思えた。長い時を経て、ようやく肌に布地をまとうのは、特に、固い乳首が布地に擦られた時に、特別な感覚を彼女に与えた。そして、ずっと自由に素肌を空気にさらしていただけに、衣類で身を包むのは、痛みすら感じるほど窮屈に思われた。
衣類に身を包んだ後、イサベラは初めて幽閉されていた部屋から外へ踏み出した。こんなに頭の中が混乱し、不確かな気持ちになったことはなかった。
レオンは謎の存在だった。実像を掴むための手がかりがいくつも欠けた謎の存在。今までは、少なくともレオンが自分に何を求めているかだけは分かっていたつもりだった。彼は私の処女を奪い、父に対する復讐の手段として、私の体内に彼の忌々しいものを注ぎ込み、植えつけるというたった一つの目的のために、執拗に私の身体を奪い続けたのである。レオンはもうその目的は達成したと思ったのだろうか? それが理由で、私に自由を許す気になったのだろうか? もはや、強引に私を奪う必要を感じなくなったから? 近々、私をここから出すつもりでいるのだろうか?
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